魔導スキルと鍛冶部屋
まさか鍛冶や錬成の前に魔導スキルを習得するとは思っていなかった僕は嬉しい反面、戸惑っていた。
「魔導スキル……使い方、分からない」
そう、全く勉強をしていない。というか全く習っていない。
それに鍛冶はゾラさん、錬成はソニンさんだが、魔導の先生はいないのだ。
「まさか魔導スキルから習得するとはのう」
「ケルベロス事件と今回の事件。幸か不幸か、それが原因でしょうね」
それ以外に原因が見当たらないもんね。
死ぬかと思った事件だけど、最終的には魔導スキルを習得出来たから良しとするべきか。
「誰に習えばいいんでしょう。ソニンさん?」
「いえ、私は教えられるほどの知識はありませんし、こういうのは専門の人に教えてもらうのが一番でしょう」
「儂も無理じゃな。魔導スキルではソニンの方が上じゃしのう」
「えー。それじゃあ、ルル?」
僕が知っている魔導師なんてルル以外にいないんだけど。
「ふーむ、ルルか」
「彼女の意思次第ですかね」
「そっかぁ。それじゃあ、今度会う時にでも聞いて見ます」
魔導スキルでは
鍛冶の時にもそういったことが出来ると聞いたことがあるので勉強はしたいところだね。
「……ですが、まずは鍛冶と錬成の基礎からですよ? 分かっていますよね?」
「は、はーい」
だからソニンさん、怖いんですって!
「まあまあ、良いではないかソニン。魔導スキルを習得したわけじゃから少し早まってものう」
「ですがゾラ様、知識の詰め込みと魔力量にも限界がありますから」
「そこは儂らがしっかりと管理してやれば問題ないじゃろう。それにの――魔導スキルに構っていられる時間が惜しくなるかものう」
「えっ? 何かあるんですか?」
魔導スキルも生産に関わる大事なスキルである。
それを差し置いて僕が何かに夢中になるとは考えにくいんですけど。
「ふっふっふっ。それは小僧の部屋に行ってみれば分かることじゃ」
「僕の部屋? ……ま、まままま、まさか!」
「部屋に行ってみるか?」
「はい!」
ゾラさんの誘い文句に頷き、僕たちはぞろぞろと僕の部屋に向かって移動を開始した。
移動中も僕の心はここにあらず、駆け足で向かいたかったけれどそこは大人として廊下を走らないように早歩きである。
苦笑している大人組には申し訳ないが、これが僕の精一杯なのだ。
ようやく到着した僕の部屋の前。
ゆっくりと扉を開くと、そこにはいつもと変わらない部屋の風景が広がる中、ベッドが置かれている右側の壁に真新しい扉が新しく取り付けられている。
「……ここが、僕の!」
「開けないのか?」
「開けますとも!」
ゴクリと唾を飲み込み、高鳴る心音を感じ、僕は扉を開けた。
「――本当に、本当にここが、僕の鍛冶部屋!」
「ピッピキャー! ピキャー!」
部屋の中央にはゾラさんが使っていたのと同じ土窯が置かれており、奥には一人掛けの椅子と机。右側には棚が置かれていて必要最低限の道具が並べられている。左側には窓が取り付けられていて今のところ何もない。
とてもシンプルだけれど、これから僕の理想の鍛冶部屋に造り替えるのだ!
むふふ、ガーレッドも新しい部屋に喜んでるね!
「ヤバい、興奮が止まらん!」
「小僧、少し落ち着け、おかしな言葉使いになっとるぞ」
「はっ! いや、しかし、興奮しますよねこれ!」
「いや、そこまで興奮はしないかと……」
「何故ですか! 鍛冶部屋ですよ! そうだ、ゾラさんから貰った槌を並べなきゃ!」
急いで部屋に戻って槌を手にして再び鍛冶部屋へ。
土窯の隣に槌を置いてうっとりと眺める。
……はぁ、早く鍛冶がしたい。
「今から、鍛冶やっちゃってもいいですか?」
「ダメじゃ」
「ダメです」
「ダメでしょうね」
「何でですか! みんな酷い!」
僕に鍛冶部屋を見せておいてやるなとは何事ですか!
こんなお預けは聞いたことがないぞ!
「最初の約束を思い出せい」
「確か、何時から何時までって決めるんでしたよね?」
「その通りじゃ。それでの、日中は儂らも仕事があるということです朝方か夜の時間、どちらかということに決定したんじゃ」
「朝方……今は、昼ですね」
「というわけで、夜まで我慢じゃな」
「そ、そんなぁ!」
「コープスくん、最初に約束しましたよね? それを破るというなら――鍛冶部屋を潰しますよ?」
「我慢します、ごめんなさい、約束守ります」
だから、ソニンさん怖いんだってば!
「安心してください。お昼はカズチと一緒に錬成の授業ですよ」
「それを先に言ってください!」
錬成が出来るなら問題ないのですよ。錬成も生産には必要不可欠だからね!
「それでは私の錬成部屋に行きましょう」
「はーい!」
「それじゃあ儂らも行くかのう」
「コープスさん、素材は
ゾラさんとホームズさんとも別れて、僕とガーレッド、ソニンさんは錬成部屋に移動した。
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