ラスフィードとバルスカイ③
みんながワイワイと話をしながらの食事の席はとても楽しかった。
あまり聞く事のできない騎士団の話では、最近のポーラ騎士団長はとても楽しそうだと聞いてどうしたものかと思ったりもしたが。
それ、絶対に僕との模擬戦が原因な気がするからなぁ。もう模擬戦はこりごりだもんなぁ。
エジルは全力で戦いたいとか言いそうだけど、もしそれをやるなら誰も見ていないところでになるだろう。……って、こんな事を考えていると本当にそうなりそうだから違う事を考えるか。
「そうだ、ジン様。この双剣の銘を伺ってもいいかな?」
タイミングよくマギドさんから双剣の銘について問い掛けられたので、僕はすでに考えていた名前を伝えた。
「ライトストーンの剣がラスフィード。バルウイングの方はバルスカイです」
「あれ? 今回はトウって付けないんだな」
「トウ、とはなんですか、カズチ様?」
「あー……俺にまで様付けは必要ないですよ。えっと、トウってのはジンが剣に付ける時によく使っていた言葉ですよ」
カズチよ、それはどれほど前の話をしているのだろうか。
「最近では普通の名前を付けてるって。それに、あれは若い頃の話だろう?」
「若いって……俺からしたら今も十分に若いと思うんですが?」
……うん、そりゃそうだ。
「でしたら、俺の双剣にもトウが付く銘を付けてくれませんか?」
「ダメです!」
「……どうしてですか?」
「どうしてって……も、もう決めたからです! 一度決めた名前は変えませんよ!」
面倒だしな!
「それでは、私の剣にはトウを付けてくださいね、コープス様」
「うぇえっ!? ちょっと、ギャレオさん!」
「ひ、卑怯ですよ、ギャレオ先輩!」
「最初に確認しなかったお前が悪い」
「ぐっ! ……分かりました、諦めますよ!」
いや、なんでみんなトウって付けたがるんだよ。別に僕のブランドってわけじゃないんだけどなぁ。
「……それに、ラスフィードもバルスカイも素晴らしい剣ですからね。素材の名前の一部が使われる事も良くありますから」
「だよね! うんうん、銘を付けるのって大変だから、最終的にはそうなっちゃうんだよね!」
「そんなに大変なのか? パッと付けられないのか?」
「カズチもやってみたら分かるよ! 本当に大変なんだからね! そうだ、せっかくだしギャレオさんの剣はカズチが付ける?」
「それはダメだろ! 見てみろよ、ギャレオ様の顔を!」
ん? ギャレオさんの顔って……あー、うん、なんかもの凄く残念そうな顔をしている。
「……ぼ、僕が責任をもって名付けます」
「あ、ありがとうございます!」
もの凄くホッとした表情でそう言われたら、マジで誰かに押し付ける事なんてできないなぁ。
「ははは。まあ、職人の宿命だな、コープス君」
「そうですね」
ユージリオさんにそう言われると、諦めるしかないか。
「そういえば、ユウキやルルたちは?」
「ユウキは後からこっちに顔を出すって言ってた。ルルは女性だけで出掛けてくるって言ってたな」
間者もいなくなったし、フローラさんやリューネさんがいるなら安心か。
それにしてもユウキは後から来るのか……今は何をしているんだろう。
「あぁ、ユウキ様ならこちらへ伺う途中ですれ違いましたよ」
「なんでも、騎士団の稽古場へ向かうのだとか。……俺との模擬戦を見た他の騎士が、ユウキ様に懇願していたようです」
……なるほど、ちょっとした生贄みたいになってるのね。
まあ、ユウキが稽古場にいるのならポーラ騎士団長が乗り込んでくる事はなさそうだな。
「午後には戻ってくると仰っていましたよ」
「そうですか、ありがとうございます。それならギャレオさんの剣の鍛冶には間に合いそうですね」
「もの凄く楽しみです!」
ギャレオさんの期待に応えられるよう、フレアイーターの素材に負けないよう頑張らないとな。
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