魔導スキル
ついでに、というわけではないがルルに聞いてみたいことがあったので、いい機会だから聞いてみた。
「ねぇねぇ、魔導スキルってどういうスキルなの?」
唐突な質問に首を傾げるルルであったが、何が聞きたいのかを把握したのか、一度頷いて口を開いた。
「魔導スキルは鍛冶、錬成の時に属性を付与させることが出来ます。鍛冶では武具に、錬成では錬成素材に付与するんだよ」
「武具にってのは分かるんだけど、錬成素材にってのはどういうこと?」
僕の
鍛冶の時に付与する手間が省けるとかかな?
「錬成素材とは言いましたが、鍛冶に使用する錬成とは異なります。主に装飾品としての錬成素材だね」
「あー、今日カズチが錬成したやつか。何となく分かってきたよ」
「錬成の時に付与したら何かあるのか?」
「うん。属性が付与された装飾品を身に付けていれば、その効果の恩恵を受けられるんだよ」
よくやっていたゲームで言えば、装備枠のアクセサリーのような物だろう。
火の指輪とか、風の指輪とか、それぞれの属性に耐性がついたりとかかな。
力や速さを補正出来る装飾品が作れたら、鍛冶の時に無属性魔法を使わなくても済みそうだ。
「ルルは魔導スキルを持ってるんだよね」
「持ってるよ。魔導スキルのランクは四だよ」
「四! ルル、お前凄かったんだな」
「カズチ、四ってそんなに凄いの?」
ランクは最低が一、最高が十である。四は半分の一つ下だからそこまで凄いとは思っていなかったよ。
「固有スキルはランクが上がるだけでも一苦労するんだ。俺の錬成スキルは二だしな」
「……僕、どっちも持ってない」
「いや、ジンの場合は加入したばかりだし、これからだろ」
うぅぅ、そうだけど、悔しいなぁ。
鍛冶でも、錬成でも、魔導でも、何かしら固有スキルを習得出来れば色々と幅が広がるだろうに。
「魔導スキルも鍛冶や錬成と同じ。ジンくんなら魔法をたくさん使っていればいずれ習得出来るよ」
ケルベロス事件でだいぶ魔法を使ったんだけど、あれ以上に使わないといけないのか?
一般スキルなら火、水、木属性がランク二に上がっていた。一般スキルと固有スキルで、ランクの上がりやすさに違いがある?
「スキルにも上がりやすさってあるのかな?」
「使っていればもちろん上がるけど、一般スキルと固有スキルだと、やっぱり固有スキルのランクは上がりにくいかなぁ。習得するのも大変だけど、そこからランクを上げるのも大変なんだ」
カンスト目指すなんて言ったけど、いまだに習得に至っていない。
カズチの言う通り加入して数日、と言うかこの世界に来て数日な訳だから当然と言えば当然なんだけど……やっぱりもどかしい。
「よし! 午後も錬成を頑張るぞ!」
「その意気だよ!」
「俺も頑張ってランクをあげなきゃだな」
ルルは食事を終えたタイミングで厨房に戻っていった。
そういえば仕事中だったんだ。長い間付き合ってくれたけど、大丈夫だったのだろうか。
「それにしても、鍛冶に錬成に魔導って、どこまでやるつもりだよ」
「どこまでもやるつもりだよ! 目標は高く持たないとね!」
「これも全属性持ちの特権ってやつだな」
その通り! 出来ることがあるならチャレンジする、それがカンストには大事なのである!
「しかし、錬成の基礎や知識不足か。ジン、鍛冶については色々知ってるのか?」
「どうだろう。本の知識だけだからなぁ。あっ、でもそれなら錬成の本で知識を補完したら、多少は良くなるかも」
「本を読んだだけで上手くなったら苦労はしないんだけどな」
苦笑しながら食後のお茶を啜るカズチ。
既に冷めてしまっていたが、それでも十分に美味しい。
「それに、習得するならやっぱり錬成の数をこなすのが重要だろうな」
「だよねー。ソニンさんのところでやるのもそうだけど、自主練習も必要かもしれないなぁ」
「そうなると、素材を自分で準備する必要があるぞ?」
「そこなんだよねー。お金が掛かるし、時間も掛かるし、どうしようかなぁ」
僕の言葉にカズチが首を傾げる。
「取りに行ったらいいじゃないか」
「やだよ、面倒臭い。それに危ないじゃないか」
「……お前、ケルベロス事件で活躍してただろ」
英雄の器の効果について知っているカズチは、ケルベロス事件についての詳細も聞いている。
僕がケルベロスを痛めつけていたことからも、取りにいけるだろうと言っているのだ。
だが、僕は鍛冶師であって、冒険者ではない。
「取りに行けるか行かないかは別だよ。危ないこと嫌いだもん。本当に行かなきゃいけない理由がない限りは行きたくないな」
「鍛冶や錬成のためでもか?」
「……ほ、本当に切羽詰まったら、考える、かも?」
自分で取りに行くのは最終手段である。
これは譲れません! ……い、今のところは。
「その考えがいつまで持つのやら。よし、そろそろ副棟梁のところに戻るか」
「そ、そうだねー」
僕の考えてることが分かっているような口振りで席を立つカズチに合わせて僕もガーレッドを抱いて立ち上がる。
カウンター越しからルルとミーシュさんに声を掛けてから、僕たちはソニンさんの錬成部屋に戻った。
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