選抜戦
翌日、僕たちは再び騎士団の稽古場へ足を運んでいた。
今回はキャラバンのメンバー全員でやって来ている。
何故ならば、ここから同行するメンバーが決まる……かもしれないからだ。
「あの、本当に同行するんですかね?」
「ここまでやって、結局ダメだとは言えないだろう?」
「……はい、そうですね」
決まる事は確定となりました。
まあ、ユージリオさんの苦労を無下にするわけにもいかないので、仕方がないか。
というわけで全員でやって来たのだ。
「広いなぁ」
「騎士以外も集まってないかな?」
「魔導師の方もいますね」
「みんな暇なのかしら?」
カズチ、ユウキ、ルル、リューネさんの順番で呟いている。
騎士の人は仕方ないとしても、何故に魔導師の方々がいるのかは分からない。リューネさんの呟きも仕方がない気がする。
「ビギャギャー!」
「ガウガウッ!」
そして、霊獣の二匹はライオネル家の庭よりも広い場所に興奮して遊びまわっている。
その様子を見つめる騎士や魔導師の視線はとても柔らかく、大きくなったとはいえ二匹はとてもかわいらしい存在なのだ。
「それでは~、選抜戦を始めたいと思います~」
そこに騎士団長の声が掛かったのだが……うん、もの凄くやる気がなさそうだ。
まあ、騎士団長が仕事を放棄して出て行く事はダメだと言われていたのでこの状態なのだろうが……言われて当然なので僕からは何も言えない。
トップが一鍛冶師を守るために王都を離れるとか、あり得ないからね。
そういった理由でオレリア隊長も選抜戦からは外された。というか、ポーラ騎士団長が外された時点で自ら辞退していたのだが。
それでも騎士団の三分の二が手をあげた事に変わりはなく、この選抜戦は非常に長丁場となる予定だった。
「まずは~――」
そこからはユージリオさんが決めた方法で選抜戦が行われていった。
何故ユージリオさんがと思うが、ポーラ騎士団長が使い物にならなかったからだ。……本当に申し訳ない。
ユージリオさんが決めた方法というのは、数が多いためにまずは大勢でバトルロイヤルを行い、残った騎士でトーナメント戦を行うというものだ。
バトルロイヤルは八回行われる予定で、今はその一回目が行われている。
その中にはイスコさんの姿もあったのだが、呆気なく倒されていた。
「あはは。やっぱり、先輩たちには勝てませんでした」
倒された騎士は壁際に移動しており、僕が声を掛けるとイスコさんは苦笑しながらそう口にした。
パッと見ではあるが、イスコさん以上に良い動きをしている騎士は多い。
さらにバトルロイヤルという乱戦の中では大きな武器を扱うイスコさんは動き難かっただろう。
そう考えると、この方法は有利不利がはっきりしてくるかもしれないな。
「そろそろ絞られてきたね」
ユウキの言葉に顔を上げると、残る騎士が三人に絞られていた。
一人目は槍を構えた青髪の騎士。
二人目は双剣を握る黒髪の騎士。
三人目は大剣を背負った赤髪の騎士。
……うん、こうして見ると小回りの利きそうな騎士が双剣の人しかいないので、イスコさんが負けたのは単なる実力不足だったみたい。
とはいえ、三人が相当な実力者であることは間違いない。
お互いに穂先、剣先で牽制しながら間合いを測っている。
間合いだけで見れば槍と大剣に分があり、双剣の騎士は不利に見えるかもしれないが、機動力をもってすれば一気に懐へ潜り込むことも可能だろう。
だからこそ、間合いで有利な槍と大剣の騎士も測りかねている。
「……動くよ」
だが、拮抗はユウキの一言とほぼ同時に崩れた。
槍の騎士が双剣の騎士めがけて突きを放ち、追従して大剣の騎士も双剣を狙う。
狙われると予想していたのか、双剣は一歩遅れて動いた大剣めがけて加速し懐に入ると、腹に刀身を叩き込んで仕留めた。
「ちっ!」
予想外に大剣がやられた事に舌打ちしつつ、それでも自分の勝ちを確実にするために槍を突き続ける。
双剣は二振りの剣を上手く使って槍をいなし、受け、少しずつ間合いを詰めていく。
「……あの双剣の騎士、強いね」
「……ユウキから見てもそう思うの?」
「……うん。僕と同じで無属性魔法をタイミングよく上手く使っているよ」
一方で槍の騎士はずっと無属性魔法を発動させているのだが、これは魔法が上手いからではない。その逆だ。
タイミングよく使う事ができないから、常に発動させている。
これではどちらが強いのかどうかは明らかだろう。
――それからすぐに一回目のバトルロイヤルは終了した。
勝ち残ったのは、双剣の騎士だった。
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