選抜戦②
一回戦が終わり、その後順調に八回戦まで終了していく。
その中で勝ち上がった騎士の中にはギャレオさんもいて、バトルロイヤルでの気合いの入った戦いに興奮してしまった。
……まあ、審判のポーラ騎士団長の表情を見た瞬間に興奮は一気に冷めてしまったが。
あなたは王都を守る国家騎士の団長様なのだから、離れるわけにはいかないでしょうに。
「それにしても、昼を通り越しちゃったね」
「うん。だからこその弁当なんだろうね」
「最初から昼を超える事が予想内だったんでしょうね」
僕の言葉にユウキとリューネさんが返してくれる。
そう、今は休憩時間なのだが、準備よく騎士団から弁当が支給されたのだ。
ただの観客には配られなかったが、ご飯を食べに行く時間も兼務されているんだろうな。
「残っている人は場所取りか?」
「ご飯をお願いしている人もいましたから、そうかもしれませんね」
「この選抜戦って、大人気なんだね!」
カズチとフローラさんとルルも緊張感なく場の雰囲気に馴染んでいた。
まあ、八試合分もの時間が過ぎたのだから緊張することもないか。最初は国家騎士の訓練場と聞いて驚いていたが、今ではその場所で普通に食事をしているわけだしな。
「ちなみになんだけど、ユウキから見て誰が勝ち上がりそうかな?」
話のネタになるだろうと思って質問を口にしてみたが、ユウキは予想外に真剣に悩み始めてしまった。
「そうだなぁ……ジンと模擬戦をしたからってわけじゃないけど、ギャレオさんには頑張って欲しい。ただ……」
「ただ?」
「……一回戦に登場したマギドさんかな」
双剣士であるマギド・アブーダさん。
巧みな無属性魔法の使い方から他の通過者よりも実力は頭一つ抜きん出ているように見える。
さらに言えば、彼は無属性魔法以外を使わずに勝利していた。
双剣の合間に魔法を交ぜていけば、さらに実力差が出てしまうかもしれない。
「ユウキみたいに無属性魔法しか使えないって可能性は?」
「可能性はあるけど、相当低いんじゃないかな。そもそも、無属性魔法しか使えなかったら国家騎士になれないと思うよ」
「そうなのか? 強かったらいいって、俺なんかは思っちゃうけど」
カズチも話に入ってきての会話に、ユウキは説明を続ける。
「もちろん強いというのは大前提だけど、総合的な強さって言うのも必要になってくるんだ」
「それは国家魔導師も同じなのか? 実は剣術もできるみたいな?」
「魔導師の場合は話が変わってくるよ。人によっては自衛でいるよう習っている人もいるみたいだけど、基本的には魔法の腕が見られる。だけど、国家騎士は違うんだ」
「なんか、国家騎士になるのって大変なんだな」
「うん。まあ、敵と相対して戦うわけだから魔法が使えればその分優位になるわけで、だからこそ無属性魔法しか使えないでは大きく不利なんだよ」
「そうなんだね。……ユウキは、魔導師になれないから国家騎士になろうとは考えなかったの?」
僕の質問にユウキは迷うことなく頷いた。
「全く考えなかったよ」
「でも、今のユウキはとても強いじゃないか。無属性魔法しか使えなくても、国家騎士になれたんじゃないの?」
「無理だろうね」
「どうして?」
「僕がここまで強くなれたのは、ジンのおかげだからだよ」
「……僕のおかげ?」
だが、ユウキの答えに僕は首を傾げてしまう。
「……僕、何かしたっけ?」
「装備もそうだけど、ジンと一緒にいて色々な事を経験できたからね」
「巻き込まれたの間違いじゃないか?」
「カズチ君の言う通りだよねー」
「そうかもしれませんね」
みんな、酷くない?
「そうかもしれないけど、僕はそのおかげで強くなれたと思っているんだ」
「ユウキも言うねぇ」
「まあね。仮に僕が国家騎士になれたとしたら、カマドにいなかったわけで、そうなるとジンとは出会えていなかった。そうなると、すぐに落ちこぼれていたはずだよ」
ユウキが簡単に落ちこぼれるとは思えないけど、本人がそう言うならそうなのかもしれない。
だが、僕のおかげ……じゃないか。僕のせいで巻き込まれて強くなるって、申し訳ない気持ちしか出てこないんだが。
「話を戻すけど、マギドさんが魔法を使うような相手が出てきたら、その人が対抗馬になるかなって感じかな」
「そっか。僕としては話しやすかったギャレオさんがいいかなって思ってたけど、マギドさんになったとしても話してみたらいいかもね」
そして、昼休憩も終わりトーナメント戦に移っていくのだった。
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