選抜戦③

 トーナメント一回戦一試合目にはユウキ一押しのマギドさんが出てくる。

 対戦相手の騎士は直剣使い、型にはまっており基本的な動きが多いが全てにおいて鋭さを持っている。

 マギドさんのように無属性魔法を上手く使いこなしているが、使いこなしているのはやはりマギドさんだ。


「はあっ!」

「ふっ!」


 鋭く振り抜かれた直剣だが、マギドさんは右の剣で受け止め、左の剣で横薙ぎを放つ。

 大きく飛び退いて回避した直剣の騎士だが、マギドさんは前傾姿勢から一気に加速して懐に潜り込んだ。


「ウ、ウインドアーマー!」


 直剣の騎士はその身に風の鎧を纏わせてマギドさんの攻撃を弾き返そうと試みた。だが――通用しなかった。


「しまった! マギド、お前は――」

「終わりです、先輩!」


 直剣の騎士が纏っていたウインドアーマーは、不思議な事に一瞬で消え去ってしまう。

 直後には双剣が直剣の騎士の胸に届き、マギドさんの勝利が決定した。


 トーナメント一回戦三試合目にはギャレオさんが登場だ。

 騎士の中に多くいるのは直剣使い。まあ、騎士の基本である剣だからだろう。

 マギドさんの対戦相手もそうだったし、ギャレオさんもそうだ。

 だが、ギャレオさんの剣は型にはまったものではなく、自らの先読みに合わせて臨機応変に動く柔軟さを持っている。

 そして、ギャレオさんの対戦相手は直剣使いの次に多い槍使いの騎士だった。


「はっ! ふっ! せいやあっ!」


 槍の騎士は鋭い連突きを放ち、フェイントを交えながら足を払いにいく。

 対してギャレオさんは様子を見ているのか連突きを直剣で捌きながら動きをしっかりと観察している。もちろん、足払いも見極めて軽く飛び上がりながら回避し、同時に振り下ろす。

 槍をしならせて剣を打ち払い距離を取ると、お互いに武器を構えて仕切り直しだ。


「……さて、今度はこちらから仕掛けさせてもらうぞ!」

「あぁ、勝負だ!」


 ギャレオさんと槍の騎士は仲が良いのか、笑みを浮かべながら試合をしている。

 袈裟斬りからの回し蹴りを見舞おうとするギャレオさんだが、その動きを読んでいたのか槍の騎士は槍の柄で回し蹴りを受け止める。

 ……いや、動きを読んだわけじゃないだろう。そう動くと分かっていて、そこに槍を置いておいたのかもしれない。そんな風に見えたのだ。


「今まで通りの戦い方では勝負がつかないか!」

「長い付き合いだからな! だが、ここからはそうはいかんぞ!」


 大きく槍を引いた槍の騎士は、鋭い突きを放つと同時に炎の矢を同時に四つ顕現させていた。


炎槍えんそう!」


 穂先が胴を狙い、四つの炎の矢が両肩と両足を狙う。それも同時にだ。


「ファイアウォール!」


 だが、ギャレオさんは炎の壁を顕現させて炎の矢を打ち消した。

 さらに、ファイアウォールを貫いた穂先を紙一重で回避すると、柄を脇に挟んで無属性魔法を全開にする。


「どおおりゃああああっ!」

「うお、うおおおおぉぉっ!?」


 武器を手放すわけにはいかず踏ん張ろうとした槍の騎士だが、先読みで最初からぶん投げる予定だったギャレオさんに軍配が上がった。

 体が浮き上がり、そのまま壁に叩きつけられてしまう。


「ぐはっ! ……く、うおっ!?」

「……これで、俺の勝ちだな?」

「……参ったよ、ギャレオ」


 そして、三試合目はギャレオさんの勝利となった。


 四試合目も終わり、今は少しの休憩時間だ。

 勝ち上がった四人は全員が確かな実力者だが、やはりマギドさんとギャレオさんが群を抜いている。

 準決勝では当たらない二人なので、決勝戦は決まったようなものだろう。


「双剣か、直剣か。話を聞いてみてからになるけど……うん、楽しみだなぁ」


 本当に二人が勝ちあがるかは分からないけど、僕はこれからの事にも思いを馳せながら準決勝が始まるのを待つのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る