採掘に行けました
予想外に上級魔獣の素材を手に入れることができた僕たちだが、魔獣素材で鍛冶をするのと錬成するのでは危険度も異なるようで、ヴァジュリアよりも上位の素材があるからとそれが必要ないわけではなかった。
「今日まではヴァジュリアを探していきたいと思います。仮に見つけられなければ、それも経験として良しとしましょう」
ソニンさんからの言葉を受けて、マリベルさんとハピー、そしてユウキが撒き餌の場所を探しに野営地から離れる。
グリノワさんが護衛となり、残りの面々で朝食の準備を始めた。
ただ、ソニンさんは料理ができないようで簡単な作業のみだ。
「……申し訳ありません」
「いえ、野菜を洗ってもらうだけでも捗りますから」
「ソニンさんにも苦手なものがあるんですね。ちょっと意外です」
「私も人間ですからね」
苦笑しながら野菜を洗っていくソニンさん。
僕とフローラさんは料理に戻り、鍋に水を注いで沸騰させ、すでに切っている具材をドンドン入れていく。
具材はみじん切りにしたものと角切りにしたものと二種類あり、溶け込む用と歯応え用だ。
スープを作っている間に炒め物に使う野菜を切り、魔法鞄に入れていたパンを火属性の応用で温めていく。
「魔法をパンを温めるだけに使うなんて、考えたこともなかったです」
「美味しく食べられた方が良くない?」
「それはそうですが……まあ、ジン様ですからね。考え方が普通と違うんですね」
「それって、貶してない?」
「褒めているんですよ」
……ものすごく違和感のある笑顔なんだが、気のせいだろうか。
さて、料理も終わり次は何をしようかと考えているタイミングでマリベルさんたちが戻ってきた。
めぼしい場所がいくつかあったようで、夕方にはそこに撒き餌をするようだ。
「うふふ〜、美味しいわね〜」
報告を終えるや否や、マリベルさんは朝食に貪りついていた。
そうとうお腹が空いていたのかと思ったのだが、単純に美味しいご飯を外で食べたかったのだとか。
「ここ最近はずっと外だったじゃないですか」
「……気分の問題なのよ〜」
などとよく分からない理由を口にしていた。
みんなが食べ終わると、護衛の三人以外は自由時間となった。
グリノワさんも自由というのは、一応御者という立場だからだ。
護衛の三人は入れ替わりで自由時間を取るようで、マリベルさんとハピー、ユウキとフローラさんで交代するみたい。
「ジン、めぼしい鉱山を見つけたが行くか?」
「行きたいです! ソニンさん、いいですか?」
「グリノワ様が一緒なら構いませんが、迷惑を掛けないようにしてくださいね」
「大丈夫ですよ! ありがとうございます!」
ソニンさんからの許可も貰い、僕はグリノワさんと一緒に野営地を離れた。
グリノワさんが目をつけていた鉱山は、五ヶ所目の撒き餌があった場所のすぐ近くだった。
野営地からは結構離れていたので、一人でこんなところまで来ていたのかと驚いてしまう。
「こっちの小さな山じゃな」
「これですか? 昨日掘ったところよりもこじんまりしてますね」
「実際は、この山の下じゃな」
「……下ですか?」
ということは、山を崩して下に掘り進めるということか?
「下に掘り進める場合、一番簡単な方法は上の部分を吹き飛ばすことじゃ」
「めちゃくちゃじゃないですか!」
「そうじゃな。だが、今回はその方法を取ることができるんじゃよ」
「普通は取れないんですか?」
めちゃくちゃだと言いわしたものの、これが一番簡単だというのも理解できる。
だが、今回はというのはどういうことだろうか。
「まずは外にあるということ。山をある程度掘り進めた後の場所だと、爆発させたことで坑道が崩れる危険性があるが、外ならばそれがない。それともう一つ、それは魔獣が周辺にいないということじゃ」
「……爆発が起きても魔獣が集まってこないってことですか?」
「そういうことじゃ。魔獣が殺到する可能性があればそのようなことはせん。面倒臭いからのう。じゃが、今ならヒュポガリオスのおかげで魔獣がほとんどいないからのう」
一日も時間がない僕たちには最高のシチュエーションということだが、僕にはもう一つ疑問があった。
「爆発に鉱石が巻き込まれることはないですか? もしくは埋もれてしまうとか?」
目的の鉱石が破壊されてしまったり、埋もれて逆に採掘しづらくなることはないのかと思ったのだが、グリノワさんは笑いながらそんなことにはならないと口にした。
「鉱石がどれくらい下にあるかは分かっておる。土属性で上のところを固めて、そのうえで吹き飛ばす。後はゆっくりと掘り進めれば、すぐに鉱石までたどり着くじゃろう」
当たり前と言った感じで淡々と説明してくれたが、それができるのが凄いと思う。
僕は、安心してグリノワさんの採掘を見ていようと思った。
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