王都観光②

 ユウキが次に案内してくれた場所は、屋台が多く建ち並ぶ一画。


「ここは屋台通りって呼ばれていて、王都のお店だけじゃなく、外から来た商人でも屋台を出して商売ができる場所なんだ」

「へぇー。それじゃあ、掘り出し物が見つかったりもするの?」

「そうだね。僕も王都で暮らしていた頃は、よく母上に連れてきてもらったんだ」


 笑顔でそう口にしたユウキだったが、その横でカズチは何やら納得顔を浮かべている。


「だから、ユウキはソラリアさんのお店でセール品を漁っていたんだな」

「あはは! そういえば、そんなこともあったね!」


 カズチの言葉にルルが同意を示している。

 だが、確かにその通りだ。

 ユウキはソラリアさんのお店で魔法石マジックストーン魔法剣マジックソードを購入している。

 セール品で安くなっていたとはいえ、衝動買いと言われてもおかしくはないだろう。

 何せ、魔法石に保存されていた魔法は使い難く、魔法剣の効果も使いどころが難しいものだった。

 そのおかげで危機を乗り越えられた面もあるのだが、それでもユウキ以外であれば購入するにもなかなかの決断が必要になったはずだ。


「ユウキ、あんたはカマドでも似たようなことをやってたの?」

「ちゃんと必要な物を買ってたんだよ!」


 ……そうだったかな?


「ほら、ジン君だって微妙な顔をしてるわよ?」

「ちょっと、ジン!」

「えっ? 顔に出てましたか?」

「もの凄く出てたわね」

「あは、あははー」


 ポーカーフェイス、難しいなぁ。

 とはいえ、確かに色々な物を見て回れるのは嬉しい限りだ。

 それに、ここなら僕もそうだけどカズチの訓練にももってこいな気がする。


「ねえ、カズチ。質の良い素材を探してみない?」

「素材の見極めだな。面白そうだ」

「いいかな、ユウキ」

「うん、大丈夫だよ」


 大噴水のように時間が決まっているものがあるかもと確認をしてみたが、笑顔で頷いてくれた。

 僕のところにはユウキとフローラさん。

 カズチのところにはルルとシルクさん。

 バジェット商会のこともあり、カズチにはシルクさんがついている。

 本当は護衛であるユウキかフローラさんをつけようと思ったのだが、顔が利くからということでシルクさんが手を上げてくれた。


「ユウキ」

「……なんだよ、姉上」

「代理戦争よ!」

「「……はい?」」


 声をあげたのは僕とカズチである。

 これは僕とカズチの訓練であって、別に勝負をしているわけではない。

 そこを代理戦争などと言われると、面倒臭いことこの上ない。


「それじゃあ、よーいスタート!」

「あっ! ちょっと、姉上!」


 カズチはシルクさんに腕を引っ張られ、引きずられながら屋台通りに入っていった。


「……なんか、ごめんね」

「いや、いいよ。代理戦争どうこうは置いといて、僕は僕なりに良い物を見つけるとするよ」

「掘り出し物があればいいですね、ジン様」


 ここで見つけた物を使って何か打つのもいいかもしれない。

 何なら、泊めてくれたお礼としてライオネル家に譲ってもいいかとすら考えている。


「それじゃあ、行こうか」


 僕がそう口にすると、二人もゆっくりと歩き出した。


 屋台通りには商品を並べている商人が声をあげて客寄せをしており、とても賑やかだ。

 こういう雰囲気はカマドでもあったけど、王都のそれは盛り上がり方が違うな。

 人通りも多いし、あちらこちらでお金のやり取りも活発に行われていた。


「これだけ活発なら、目利きができていない人もいるんだろうなぁ」

「ですね。その中で掘り出し物を見つけていたユウキ様は、凄いですね」

「……」

「どうしたの、ユウキ?」


 何故か黙り込んでしまったユウキに首を傾げていると、恥ずかしそうに口を開いた。


「……その、僕は掘り出し物を見つけられなかったんだ」

「そうなの? でも、よく足を運んでいたんだよね?」

「足を運んでいただけで、目利きができるとは限らないだろう?」


 苦笑しながらそう口にしたユウキ。


「レイネ様は何も言わなかったのですか?」

「どうやら、僕に社会経験をさせたかったみたい。まあ、そのおかげで確実に良いものだけを買うようになったんだけどね」

「……魔法石と魔法剣は?」

「あ、あれは珍しいものだったし、使いどころを間違えなければ十分使えるものだよ!」


 まあ、百歩譲って魔法石は保存型のものなので、これからも十分にその役目を果たしてくれるだろう。

 しかし、魔法剣は当時のユウキでは使い物にならなかったはずだ。

 パーティを組んだり、今のキャラバンであれば十分使えるだろうけどね。


「……まあ、そういうことにしておくよ」

「そうですね」


 ちょっとした昔話に花を咲かせながら、僕は素材の見極めを始めた。

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