この世界で初めての

 部屋に戻りゆっくりしながらお世話になった人のことを考えている。

 沢山い過ぎて思い当たる人を片っ端から脳内に記憶していくのだが、それでも覚えきれないと名前をメモしていく。

 素材なら山のようにあるのでそれぞれのイメージに合わせた色の素材で錬成や鍛冶をしていきたい。


「ピキャ?」

「ガーレッドも何か欲しいの?」

「ピッキャン!」


 とても元気よく頷いてくれたので、頭を撫でながらガーレッドにも何かをプレゼントしようと考える。

 イメージカラーは赤なんだけど、それだとありきたり過ぎてつまらない。


「赤色と対照的な青色で何かを作るのも面白そうだな」

「ピーピキャン!」

「楽しそうだって? ふふ、それじゃあ考えておくよ」


 青色ならアクアジェルがあるし、宝石みたいなカットで綺麗に仕上げることも可能だと思う。

 でもガーレッドの動きの邪魔にならないようにするにはどうしたらいいのだろうか。


「ピッキャキャン! ピキャン!」

「身に付けるものじゃなくていいって?」

「ピピー!」

「綺麗なものならずーっと見ていられるの?」

「ピキャン!」


 まあ、ガーレッドがそういうならそういうことなのだろう。

 ならば僕にできることといえば何よりも美しさを重視した錬成を行うということだ。

 アクアジェルの構築をどのようにするか、ダイヤモンドみたいにできたらいいんだけど……ブリリアントカットだっけ? 名前は聞いたことがあるんだけど実際には目にしたことがないんだよなぁ。宝石とは縁のない生活だったし。

 それでも試しにイメージの中にあるブリリアントカットで構築を試してみてもいいかもしれない。


「今度やってみようかな。それで成功したら、女性陣には同じ形で錬成をしたら喜ばれるかも」


 ただ、指輪をあげる行為がどういう風に捉えられるかが分からないんだけど……。


「まあ、子供だし大丈夫だろう。お世話になった人にプレゼントしてるって言えば問題ないだろうし」


 今日はさすがに夜も遅いのでガーレッドの分は明日以降にでも錬成してみよう。そして、上手くいけば少しずつでもいいから作っていこうかな。

 そうなると、男性陣には何がいいだろうか。

 冒険者をしている人には武器だろうけど、お世話になった人にはすでに鍛冶で打ったものを手渡している人が多いんだよね。

 ヴォルドさんには黒羅刀こくらとう、ガルさんには雷切らいきり、ラウルさんとロワルさんには龍之片割たつのかたわれ虎之片割とらのかたわれ

 唯一グリノワさんにだけは僕が打ったものをあげられてないけど、ゾラさんが打った武器を貰っているので不要だろう。


「……装飾品に魔導陣で付与を与えようかな」


 僕が作るものよりも質の良いものを持っている可能性は大いにあるが、それでも今の僕にできる全力のものをプレゼントしたい。

 フローラさんがエルミドさんに師事しているから、僕も教えてもらおうかな。


「しかし、エルミドさんのお願い事を忘れてた時は焦ったなぁ」


 岩石竜ビッグロックドラゴンの外殻。石化を治す薬を作るのに必要な素材だ。

 魔獣を引き寄せる道具でヒュポガリオスが引き寄せられたせいで姿を隠していた為に倒すことができなかった――と思っていたんだけど。


「倒した魔獣の群れの中に紛れていたなんて思わないよなぁ」


 回収していた素材を見ていくと、その中に岩石竜の外殻が混ざっていたのだ。

 上級魔獣なので気づきそうなものなのだが、僕は何が上級魔獣で岩石竜なのか見分けがつかなかったのでちゃっちゃと魔法鞄に入れていたのだ。

 ユウキやフローラさんも気づかなかったってことは、解体はマリベルさんがやっていたのかもしれない。

 結果としてはエルミドさんの依頼も完了できたので良かったが、次回からは気をつけなければならない。


「……っと、別のところに思考が向いちゃったな。フローラさんにお願いして、僕も教えてもらえないか聞いてみよう」


 鍛冶はゾラさん、錬成はソニンさん、魔導はエルミドさんと師匠を見つけられれば、これから先の生産職としての未来は明るくなる気がするよ!


「ピキャ! ピッキャン!」

「どうしたの、ガーレッド?」

「ピキャ! ピキャーキャーン!」


 何やら窓の外を指差しているので僕はイスから立ち上がり外を見てみる。すると――


「……うわあっ! この世界でも雪って降るんだね!」

「ピッキャーン!」


 前世で見た雪と同じで真っ白な雪が降っている。

 まだほんの少しではあるが、それでも季節を跨ぎこの世界で生きてきたんだと実感してしまう。


「……明日は、カズチやルルを誘って遊んでみようかな」

「ピキャーン!」


 二人の予定も聞かないといけないけど、雪が降ったなら遊ぶに越したことはない!


「……僕の思考、やっぱり子供に寄ってきてるよなぁ」


 そう思いながらも、それでもいいかと考えながらワクワクした気持ちでベッドへ横になったのだった。

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