二度目の錬成
錬成部屋に戻ると、椅子に腰掛けてお茶を飲んでいるソニンさんがいた。
食事はどうしたのだろうかと気になったが、どうやら弁当を持っていたみたい。机の上には弁当箱が置かれており、食事も既に終わっているようだ。
「休憩はもう大丈夫ですか?」
「大丈夫です! 早く錬成がしたいので!」
「あー、はい。問題ありません、副棟梁」
苦笑を浮かべながら立ち上がったソニンさんは、午前中と同じように僕には銅を、カズチにはケルン石を手渡した。
「コープスくんの場合は数をこなすことも大事ですから、午後は二回の錬成を行います。午前中よりも良くなるように考えながら、やってみてください」
「はーい」
「カズチは新しい形をイメージして作ってみてください。そうですねぇ、最終的にどういった装飾品になるのかをイメージすれば、自ずとどのような形が良いかイメージ出来ると思いますよ」
「はい!」
椅子に腰掛けて錬成を開始する。
午前の錬成よりもリースの発動はスムーズに行うことが出来た。
慎重に行うだけではダメで、適度な速度があった方がやりやすいのだと気づいたのだ。
隣でソニンさんが頷いているのが何となくわかる。
魔力が錬成陣に行き渡ったのを見て、僕はイメージを固めて分解を開始、銅がゆっくりと溶けていき熱を持ち始める。
ある程度溶けたのを確認したら排除を行う。より熱を与えることで不純物が燃焼、銅の中から無くなっていく。
分解は終わったが、今回は排除が終わってから浄化に進もうと考えた。
同時進行でも浄化は問題なく出来たのだが、気のせいかもしれないけど押し返されるような感覚? があったのだ。
もしかしたら、それは排除前の不純物からの抵抗、のようなものかもしれないと考えた。仮にそうだとしたら、時間短縮にはなるが無駄に魔力を使うことになるかもしれない。
「……素晴らしい」
ソニンさんの呟きを耳にしながら、僕の考えが正解だと確信を持って排除を進めていく。
……よし、終わった。次は浄化だ。
最初の錬成の時には魔力の量を一定にして注ぎ続けていたけれど、それではダメだと思う。
使うところには使う、それが重要ではないだろうか。
僕は浄化を行うにあたり、魔力の量を増やしながら作業を進めていく。
魔素の浄化速度が上昇、そして何となくだけど浄化の質も上がっているような気がする。
……なんか、上手くいきそうだぞ?
浄化の光が消えたのを確認した僕は構築に移る。
せっかくなので丸形ではなく四角に形成してみよう。今後、色んな形に形成することもあるだろうしね。
出来上がった銅は綺麗な正方形に出来上がった。
「……ど、どうでしょう!」
「今度は四角ですか。本当に、次から次へと。では、見てみましょう」
ん? 次から次って、何が?
……まあ、とりあえず錬成の出来の方が気になるので置いておこう。
上から下から、横からも眺めながらソニンさんが口を開く。
「うーん、良くはなっていますけど、やはり中の上ですね」
「だー!」
「ピギャ!」
あ、ごめんごめん。ガーレッドを驚かせちゃった。
「これでも中の上ですか!」
「ですが確実に良くなっていますよ、その意気です」
「そう、ですね」
悔しい。
でも、よくよく考えればこれは僕が望んでいた結果かもしれない。
鍛冶の出来がおかしいのであって、普通ならコツコツと積み重ねて良くなっていくのだから。
「よーし、頑張るぞ!」
「やる気はよし、ですが少し休んでからですよ」
「はーい!」
錬成、相当に魔力を使うようだ。
お昼を挟んで二回目だけど、少し怠さが出てきた。
倒れた時と比べればまだまだやれるけど、それでも違和感が出てきたことには驚いたな。
やはり経験者の言葉は大事である。
「カズチ、装飾品のイメージは出来ましたか?」
「いえ、その、装飾品にどういったものがあるのか分からなくて」
「……まさか、そこに問題があるとは思いませんでした」
「カズチって女の子にプレゼントとかしたことないの?」
「あるわけないだろ。……まさか、ジンはあるのか?」
「あ……あー、ないない」
「……本当か?」
「ほ、本当だって! ないから!」
日本で生きていた時にはそれなりに女性とも付き合ってきたけど、ここでの僕はまだまだ子供である。
プレゼントを女の子にあげたことがあるとか、あり得ないよねー。
「と、とりあえずさ! 今日は使いやすい丸形とかにして、明日色んなところを見て回るってのはどうだろう!」
「……はぁ、それでいいんじゃねぇか?」
「そうですね。明日はお休みの予定でしたし、行ってらっしゃい」
な、何とか誤魔化せたの、かな?
「まあ、俺よりも知識はありそうだから色々教えてくれよな」
「……あー、えーっと、そうだね?」
ダメだ、誤魔化せてないよ!
--そして、最後の錬成は気もそぞろになってしまい大失敗してしまった僕だった。
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