依頼の確認
教会を後にした僕は、ガーレッドと一緒にカマドを散策すると本部へと戻った。
ユウキとフローラさんも魔獣討伐に出ているようで、僕とガーレッドだけで捜しに行くわけにはいかないのだ。
ユウキが晩ご飯時に戻ってきたら聞いてみようと思っていたのだが、思いの外戻ってくるのが早くて驚いてしまった。
「あれ? 今日はもう終わりなの?」
「フローラさんが魔導スキルのお師匠様のところで用事があるみたいなんだ」
「そっかぁ。……ユウキ、ちょっと相談があるんだけど」
「何、どうしたの?」
フローラさんの用事が長引くようであれば難しいかな、と思いながら明後日の護衛依頼について聞いてみたのだが、返事はすぐに返ってきた。
「僕は行ってみたいかも。最初の護衛依頼があんなだったし、一度はちゃんとこなしておきたいんだよね」
「最初……あー、あれね」
ユウキの最初の護衛依頼と言えば、悪魔事件の時の話である。
フローラさんの元パーティメンバーに見捨てられて森の奥深くで置いてきぼりにされて、さらに悪魔と出くわしてしまったあの事件。
ユウキやフローラさんの中では許しているのかもしれないが、僕としてはいまだに元パーティメンバーのポットさんたちのことが許せなかった。
「ポットたちもあれから大変みたいだし、そんな嫌な顔をしないでよ」
「ユウキたちと比べたら屁みたいなもんでしょ?」
「屁って。まあ、そうかもしれないけど、もういいんだよ。フローラさんも吹っ切れているしね」
話を聞くと、鉱山での一件以降もポットさんから声掛けはあったらしい。
だが、フローラさんがはっきりと断りを入れたこと、そしてその場所が冒険者ギルドだったこと、さらにギルドと他の冒険者と良好な関係を築いていたユウキが関わっていたことなど、色々なことがプラスに働いてポットさんたちは周りからガツンと言われたようだ。
まあ、キルト鉱石の件でもギルドを介さない依頼を受けていた疑いもあるし、今はおとなしくしているのかもしれない。
「それならいいんだけど……って、ごめん、話が逸れちゃったね。護衛依頼の話なんだけど、フローラさんの用事が長引きそうなら断ってくれてもいいんだけど、どうする?」
「そうだなぁ……せっかくだし、今からフローラさんが学んでいる魔導師のお店に行ってみる?」
まさかの提案に僕は驚くと共に、魔導師のお店と聞いて興味も湧いてしまった。
「でも、いいのかな? 邪魔にならない?」
「僕もたまに見せてもらってるから、大丈夫じゃないかな。もしダメだったら、授業が終わるのを待ってから聞いてみるよ」
「……それもそうだね」
明後日ということで時間も迫っている。
ここはユウキに甘える形でフローラさんが学んでいるという魔導師のお店に向かうことにした。
※※※※
魔導師のお店は本部とは真逆の東地区に構えていた。
パッと見は木造のどこにでもありそうな造りなのだが、近づくにつれて不思議な臭いが漂い始めた。
「……ユウギ、ごれってだんの臭い?」
鼻をつまみながらだったので変な喋り方になってしまった。
「あはは、おそらく魔導師の先生が薬草を煮詰めているんじゃないかな」
「ユウギは臭くないの?」
「僕は何度も来てるから慣れちゃったかな」
この臭いに慣れたって、凄いなぁ。僕は鼻をつままないとこの場からすぐにでも逃げ出したくなっちゃうよ。
「ブローラさんも慣れたのかな?」
「それこそ、毎日のように通ってるからね」
でも、二人からは薬草の臭いなんて感じたこともなかったんだけど、どうしてだろうか。
何か理由があるのだろうと思いながらお店に到着すると、ユウキがドアを開けて中に入っていったので、僕もついていく。
「おやおや、ユウキの坊やじゃないか」
「えっ、ユウキ様? それにコープス様まで?」
魔導師の先生とフローラさんが奥から顔を覗かせたので、僕は鼻をつまみながら逆の手で合図を送る。
「ほほほ、君には薬草の臭いがきついようだね」
「ずみません」
「初めてでは仕方ないからね。どれ、緩和しようか」
そう言った魔導師の先生が大きく息を吸い込み、そしてゆっくりと長く吐き出していく。
すると、先ほどまで漂っていた薬草の臭いが全く気にならなくなっていた。
「……おぉ、凄いね」
「ほほほ、君がフローラとユウキの友達のジン・コープスだね。私は魔導師のエルミドさ、よろしくね」
魔導師のエルミドさんと握手をした僕は、お店に並んでいる商品に目を奪われてしまった。
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