魔獣との戦闘
その後、暗殺者との戦闘はすぐに終了した。
目の前の敵を倒し終わったところから他のところに援護へと入り次々と掃討。ホームズさんとヴォルドさんも加わり、本当にあっという間の出来事だった。
だが、今回の戦闘はこれだけでは終わらない。
「次は魔獣との戦闘だな」
僅かに息を切らしているヴォルドさんや他の冒険者たち。今の状態で魔獣との連戦となれば、少なからず被害が出てもおかしくはないだろう。
ニコラさんがいるとはいえ、そこに頼りきってしまうのも危険だろう。即死のダメージを受けてしまえば回復も間に合わないのだ。
「メル、魔法はまだいけそうか?」
「はい、大丈夫、です」
メルさんに至っては肩で息をしている状況だ。相当魔力を消費しているのだろう。
ここに至り、後衛の人手不足が露呈した状況だ。
「……あのー」
そこで僕は手を上げる。
「なんだ小僧、どうしたんだ?」
「いえ、魔法だったら僕も使えますけど」
「……あっ! もしかして、霧を吹き飛ばした風ってジン君が出してくれたの?」
「あん? あれはメルがやったんじゃなかったのか?」
「私は火の玉を防ぐので精一杯でしたから」
ヴォルドさんの疑問に答えるメルさんの表情は困っていた。自分の実力不足を口にしているわけだから仕方ないのだが、あの状況では仕方ないのではないか。むしろ、森を燃やさずに防ぎきったのだからすごいと思う。
「魔力枯渇の経験がある僕としては、メルさんには少し休んでもらった方がいいと思います」
「魔力枯渇って、ジン君なにをやったの?」
「いや、まあ、興味本意で?」
命の危険もある魔力枯渇を興味本意と言われたからか、メルさんの表情がピクピクしている。実際にはそんなものがあると知らなかったのだが、それはそれで常識知らずと言われるだろうからそのまま話を進めることにした。
「というわけで、魔獣相手なら手加減とかいらないし、細かな操作は不要だと思うのでやらせてください。一応、ホームズさんからは魔獣相手ならって了承はもらってますよ」
みんなの視線が一斉にホームズさんに集まる。
「……はぁ。まあ、いいでしょう。私も近くにいますから」
あ、あれ? 何かまずかっただろうか。ヴォルドさんも顔を覆ってるし。
「風属性魔法も使ってますし、あと一回くらいはね」
「……は、はぁ」
僕、絶対にやらかしたっぽい。ホームズさんの表情が笑っているようで笑ってないんだもの!
「こちらの護衛はグリノワさんとヴォルドでお願いします」
「おいおい、俺までのけ者とは──」
「あなた、怪我をしてるでしょう? 完全に治るまでは後方にいてください。それと、ニコラさんも治療の為にこちらで待機を」
「ザリウスよ、儂は何故に待機なのじゃ?」
「ないとは思いますが、再びの襲撃に備えてです。ヴォルドと連携を取れるのは、グリノワさんが一番でしょうからね」
「なるほど。分かったわい」
メイスを肩に乗せて納得したグリノワさんだけど、ヴォルドさんはいまだに不満そうである。
だが、今の自分では足を引っ張るであろうことも理解しているのか口には出さなかった。
「それじゃあ、俺が斥候で行ってくるわ」
「えっ! ガルさん、僕達が行きますよ!」
「そうですよ、わざわざガルさんが行かなくても」
「今回は速さが大事だからな、俺が適任なんだ。それじゃあ行ってくるわ」
ラウルさんとロワルさんが申し訳なさそうな表情でガルさんを見送った。
本来の仕事を全うできなかったことが悔しいのだろう。僕だって、生産の仕事を誰かに奪われたら腹が立つし、自分の不出来を呪うはずだからね。
「こうやって成長していくんですよ」
僕の心情に気づいたのか、ホームズさんがそんなことを呟いていた。
二人もガルさんの言葉が正しいと分かっているから言い返さないのだ。この経験が、きっと二人を育ててくれるのだろう。
数分後、戻ってきたガルさんから魔獣の規模が報告された。
「昨日と同じで興奮してるな。それと、数が多い。一昨日と同じで五〇匹はいるかもしれない」
「興奮状態の魔獣が五〇匹か。なんで魔獣同士で争わないのかが不思議だな」
「でも、気づかれてなければ大丈夫ですよ。行きましょう、ホームズさん」
「そうですね」
あっけらかんと言い放つ僕に、ヴォルドさんとガルさんは目を開いたまま固まっているが、ホームズさんは当たり前のように返事をしてくれて横に並ぶ。
「ガル、場所を教えてください」
「あ、あぁ、分かった」
こうして、僕は初めて戦闘に参加することになった。
自分から言い出したことなので仕事はきちんとこなさなければならない。とりあえず、半分以上を削れればいいだろうか?
火炎放射は森を焼いちゃうし、水爆弾で倒せるかは怪しい。ミニ水爆弾だと一匹ずつしか狙えないし……まあ、倒し方は到着してから考えるとしよう。
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連続投稿最終日の宣伝です!
発売から二日が経ちました。ど、どうなんだろう、売れてるのかどうか、気になるところですね。
私は毎日書店に足を運んでいますが、やはりまだ並んではいないようです。
……も、もどかしい。。
読者様にはぜひぜひ、お手に取っていただけると嬉しいです!!
また、次の更新からは二日に一回となります、ご了承くださいませ。
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