双頭の竜をイメージしてみました
――出来上がった剣を見て、ポーラ騎士団長もオレリア隊長も満足いってくれたようだ。
「ほほう。私には光ではなく火属性の剣か!」
「はい。でも、本当に良かったんですか? 属性レベルを聞いちゃって」
「構わん! 光属性に耐性を持つ魔獣もいるからな! そうなったらこのフレイムバイトで斬り捨ててやるさ!」
事前に聞いていたのだが、ポーラ騎士団長が持つ一般スキルの内、一番レベルが高いのが光属性でレベル6。次に高かったのが火属性でレベル5である。
光属性の剣を持っており、さらに超一級品の作品を超えるものを超えるには素材が足りなかったこともあり、今回は火属性の剣を打たせてもらった。
ポーラ騎士団長も言っていたが、魔獣の中には各属性に耐性を持つものもいるので属性違いの剣を持つ事も多いのだ。
「私は風属性の剣ですね!」
「はい。同じ理由ですが、土属性の次が風属性でしたから」
というか、オレリア隊長の場合は土属性の他が風と無だったので、消去法で風属性になってしまった。
むしろ、土竜の素材を使った剣を持っているのに別の剣を所望すること自体がおかしな話なのだ。
竜の素材は小竜であっても貴重なものである。それが土属性最高位と言われている土竜の素材を使っているんだよ? 超える素材があるわけないじゃないか!
色々と妥協した結果になるのだが、二人が満足してくれているから良かったと思う事にしよう。
それに、この二振りの剣が対になっているもオレリア隊長が納得してくれた大きな点でもある。
「ふふふ。ポーラ様、剣をくっつけましょう!」
「もう。オレリアは本当に剣が好きなのね」
いいえ、違います。オレリア隊長が好きなのはポーラ騎士団長です。
口に出して言いたいのだが、それを言うとオレリア隊長が僕の首を落とす……事はないと思いたいが、ないとは言えない気がするので口にしない。
そんな事を考えていると二人が剣と剣を横にしてくっつける。
「双頭の竜……美しいですね!」
「コープス様は期待以上の剣を作ってくれました! 本当に感謝申し上げます!」
柄の模様だが、横に並べる事で双頭の竜が浮かび上がるように刻み込んである。滑り止めにもなっているのだが、これは苦肉の策でもある。
一番の問題になっていたのは当然ながらオレリア隊長の要望であるお揃いの剣だ。
お揃いにする事は互いの戦闘スタイルも違うわけで、使っている剣も違うのだから難しい。ならばと対になる剣を考えたのだが属性が全く違うのでそれも無理。
ならばと二つ揃った時に何か形になるものと考えたのだが、剣としての機能を一つでも十分に発揮できるようにするには、これしか考えられなかった。
他にもやりようはあったかもしれないが、時間もなかったしこれが僕の限界だ。
「……本当に、外で鍛冶をしてしまったのか」
「……英雄と言うのは、常識を覆す存在なのですね」
横でギャレオさんとマギドさんが唖然としていたが、そこには全く触れなかった。
マギドさんとは一緒に行動する事になるし、しばらくは同じような反応を見られそうで楽しくなるかもしれない。
「満足してもらえてよかったな、ジン」
「うん。カズチもありがとう」
大きく伸びをしているカズチにもお礼を口にして、僕も同じ動きをする。
「でも、明日は三本になるからね?」
「あー……うん、今日は早く戻って休もうぜ」
明日のことを考えたのか、カズチは大きく息を吐き出すと帰宅を促してくる。
「お二方は明日、どちらにいますか?」
「「……」」
「ギャレオさん? マギドさん?」
予想を大きく上回ると、人は音が聞こえなくなるようです。
「……おーい!」
「はっ! す、すみません!」
「私たちが明日はライオネル家へ伺います! それでよろしいでしょうか、魔導師長様!」
「もちろん、構わないよ。門番にも伝えておくとしよう。……また庭が鍛冶場になるのだな」
「あぁー……ご迷惑でしたか?」
そりゃそうだろう。庭は本来、鍛冶場になりえないのだから。
「いいや、そんな事はないさ。ただ、この状況に慣れてきた自分が恐ろしいと思ってな」
「……私たちも慣れていくでしょうか?」
「……ギャレオさんはいいですよ。俺は、これからずっとこの状況になるんですよ?」
……あれ? マギドさん、護衛になりたくて選抜戦に参加したんだよね? なんだか、自信が無くなってきたぞ?
そんな感情が生まれてきた中、本当に解散となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます