錬成の勉強②

 ソニンさんの錬成講座、開講です!


「まずは錬成の手順です--カズチ」

「は、はい。錬成の手順は大きく分けて四つ。分解、排除、浄化、構築です」

「その通り。分解は見た目に見える不純物と素材である銅を分ける作業で、排除は見た目に見えない素材の中にある不純物を分ける作業です。この二つの作業は間を空けずに行います。錬成師が全員素材に手をかざしていたでしょう? あれは錬成のための光魔法であるリースを発動していたのですよ」


 は、初めて魔法の名前を耳にしたよ! ただ火を出したり水を出したりするだけじゃないんだね!


「……ジ、ジン? 今の説明の中でどこにニヤニヤする要素があったんだ?」

「へっ? あ、ごめんねー、気にしないでねー」


 いかんいかん、今は錬成の時間ですよー!

 ……よし、気を取り直して続きを聞きましょう。

 確かに見習いたちも手をかざして何やら呟いていた。そうすることで素材がひとりでに動き出したからあれのことだろう。

 でも不純物が飛び出したり、素材が一度溶けてまた固まったりしていたけど、そこは人それぞれなのだろうか。


「錬成場で見たときには色々な方法があるように見えたんですけど、基本的な方法ってあるんですか?」

「基本というのはありませんが、多いのは素材を溶かす方法でしょうか。見た目にも素材から不純物が取り除かれていくのが分かりやすいですから。私の方法も溶かすやり方ですし」

「儂の場合は砕いて取り除くがの」

「その方法はゾラ様にしかできないので聞かなくていいですからね」


 ……ソニンさん、やっぱりゾラさんの扱いが雑だ。

 ゾラさんも気にしてないようだからいいの……いや、気にしてるみたいだねー、なんかいじけてるっぽいねー。

 ……まあ、今は錬成の話が重要だから無視だけど!


「分解、排除が終わると次は浄化です。素材は基本的に自然界から採掘されます。それらは少なからず魔獣から放たれる魔素を含んでしまっています。それら魔素を取り除く作業のことが浄化です」

「……えっ、魔獣? 魔素?」


 異世界的コメント、だけど今はいらなかった!

 魔素って何よ。それがあったら錬成はできないのか、それともできたとしても良い素材にならないのか。

 浄化が錬成の一番のポイントだと判断した僕は質問のために手を挙げた。


「はい! 魔素を含んでいたら錬成は成功しないんですか?」

「できないわけではありませんが、正直使い物になりません。不純物の場合は残っていても平均くらいの純度で錬成することはできますが、魔素が残ってしまうと平均以下の純度の素材しかできないのです」

「そ、そこまでなんですか」

「ですから、浄化で躓く見習いは多くいます。魔獣に触れる機会なんて本来必要ありませんが、錬成師の場合は魔素を感知するために敢えて魔獣に近づくこともありますから、覚悟していてくださいね」


 嫌なことを聞いたよ。

 錬成師って、絶対に引きこもりだよね! 違っても戦闘力があるとは思えないんだけど!

 ……あ、だから加入祝いに銀狼刀ぎんろうとうをくれたのか、魔獣と対峙すること前提で!


「最後に構築ですが、これは今までの三行程を終えた素材を元の形状に戻す作業です。溶けた素材を固形物に戻して終了となります。これらの作業は全て専用の台座で行うか、錬成陣れんせいじんの上でしかできません」

「れ、れんせいじん?」


 また新しい単語が出てきたよ。

 錬成に関してはこの世界の技術だし知らない単語が飛び出すのは仕方ないけど、魔護符の後だからどうしても大袈裟に考えてしまう。

 だけど護符、ではなく陣、って言うくらいだから錬成の技術なんだと信じたい。


「錬成に使用する台座には必ず錬成陣が書き込まれています。ただ、台座は高価な物なので常に持ち運ぶのは危険です。なので出張先や旅先で錬成を行う場合には錬成陣が書き込まれた布を持っていくのが一般的になっています。それがこれですね」


 机の引き出しから取り出された布にはカーテンに似た模様が書き込まれている。


「錬成陣が書き込まれた布、これを錬成布れんせいふと呼んでいます」

「れんせいふ、ですね」


 ……うん、後でカズチに教えてもらうぞ。

 いくら生産が好きな僕でも鍛冶と錬成、全部を覚えていられる自信がなくなってきた。


「錬成布は持ち運びができる分擦れたりして消耗が激しいので使い捨てされることが多いですが、どちらも錬成師自らが作るものですから錬成スキルの習得を目指しましょうね!」

「はーい!」


 ……よかった、魔導スキルは関係なかったよ!

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