ジンの大暴れ
襲撃
翌朝、二の鐘に起きた僕は痛い体に鞭を打ちながら体を流した。
スッキリした後は床に座りストレッチを行う。これで良くなるとは思っていないが、気持ち的に行なっている。
ガーレッドも起きてきて僕に甘えるように顔を擦り付けてくるのが可愛らしい。
ストレッチも終わりガーレッドを撫でていると、ドアがノックされた。
『--カズチだけど、起きてるか?』
「起きてるよ、入って」
入ってきたカズチはベッドの端に腰掛けてガーレッドを撫でている僕を見て小さく息を吐き出した。
「なんだ、元気そうじゃん」
「そうでもない、体ガッチガチだし」
あっさりと答えた僕に苦笑しながらカズチもガーレッドを撫でている。
そのまま椅子に座ったカズチと今日の予定について話し合うことにした。
「動けそうか?」
「うーん、何とかって感じ。走ったり跳んだりは出来ないかなぁ」
「そっか。なら今日はゆっくり休んでた方がいいかもな。俺も錬金の勉強をしなくちゃいけないし」
何だかんだでカズチは僕にずっと付き合ってくれていたもんね。
「ありがとね」
「……そんなんじゃねぇから」
ほほほっ、照れるな照れるな。
「なあ、ジンって昨日の鍛冶が初めてだったんだよな?」
「そうだよ」
「それにしちゃあ手際よかったよな。勉強してたのか?」
「あー、そうだよ! 勉強してたんだ! いやー、役に立ってよかったよー!」
記憶がないって言ってるのに知ってるなんて言えないよ、やべーやべー。
カズチは明らかに怪しんでるけど探り入れてこないはず。
「……まぁ、ジンだしな」
そう、結局僕の場合はそうなるのです。
嬉しいのか悲しいのかは置いといて、今回はそれで済んでよかったよ。
「しっかし、オリジナルスキルってのは凄いんだなぁ。初めての鍛冶でいきなり超一級品が出来るとかインチキだろ」
「それは僕も思うよ。成長する楽しみがないもんね」
「それもそうだけど……いや、そうだな。最初から何でも出来ちまったらつまらねぇよな」
「あっ! そういえば作ったナイフ、ゾラさんが持ったままだった」
「おっと、そうだった。棟梁からそのナイフを預かってるんだ。忘れる前に返しとくな」
そう言って手渡された銅のナイフには鞘がついていた。
僕が首を傾げているとカズチが説明してくれた。
「あの後、棟梁が鞘を作ってくれたんだってさ。こんなナイフを刀身むき出しで置いとく方が危ないんだとさ」
……僕が悪いんじゃありません、スキルが悪いんです。
「そういえば、棟梁は朝早くから出かけたぞ。なんか急いでるみたいだったけど何かあったのかね?」
何かと言われると思い出すのはユウキとゾラさんの会話くらいだよね。
結局、何の話をしていたのか分からなかったけど関係しているのは確実だろう。
「そうだカズチ、事務室に行きたいんだけど一緒に行かない?」
「いいけど、何の用事だ?」
「本と洋服はお願いしてて貰ったんだけど、お金は使い道が分からなかったから貰ってないんだ。自分で依頼することもあるだろうし、ホームズさんに少しお小遣いを貰えたらって思ってさ」
最初に渡しておこうか聞かれた時には断っていたけど、今は依頼や道具屋で何か買ったりするかもしれないし、持っていて損はないだろう。
「今の時間なら起きてるはずだからそのまま行くか?」
「助かるよ」
だって、一人だと途中でバテそうなんだもの。
本当はガーレッドを抱いて歩きたかったけど腕がキツイので昨日のカバンに入れて顔だけ出してもらった。
これはこれで可愛すぎる。朝も早いので人は少ないが通り過ぎる人たちも最初は驚いているが結局は目尻をトロンとさせて眺めながら通り過ぎて行く。
やっぱり可愛いは正義だなぁ。と思いながら事務室に到着した。
「おはようございまーす。ホームズさん……って、いない?」
「本当だな。でもテーブルに飲み物があるからいたはずだぞ」
どこかに行っているようだ、タイミングが悪かったなぁ。
勝手に入るのも気がひけるし事務室の前で待っていることにした。
--だが、これがいけなかった。
「--あいつだ!」
「えっ?」
突然の怒鳴り声に振り向くと、そこには見たことのない男性が四人立っている。その手には--ナイフが握られていた。
「霊獣を奪え!」
「えっ、何? 何だよ!」
「ジン、逃げろ! こいつらの狙いはガーレッドだ!」
逃げろって言われても、筋肉痛だし走れないよ!
カズチは腰に差していた短剣を抜き放ち侵入者と対峙する。
「ガキが、邪魔だ!」
「くそったれ!」
カズチはヤケクソ気味に短剣を振るうが軽く弾かれてしまい脇腹に蹴りが入ってしまう。
「ぐはあっ!」
「カズチ! だ、誰かー! 助けてー!」
「うるせえぞ!」
僕が叫んだのと同時に、カズチを蹴り飛ばしたのとは別の侵入者が一瞬で目の前に現れた。
--む、無属性魔法!
「そのカバンをよこせ!」
「やだ! 絶対に、離さないぞ!」
「ピ、ピキュ〜……」
「こいつ、手を、離せ」
「あがっ!」
頬を殴られた僕は簡単に吹き飛ばされて壁に激突してしまう。その勢いでカバンの紐が肩から外れてしまった。
「へ、へへっ、これで俺たちも一気に上級冒険者だ!」
「や……やめろ……返せ!」
「ピキューーーー!」
「てめぇら、ずらかるぞ!」
侵入者の四人はガーレッドを抱えながら『神の槌』本部から逃げて行った。
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