予想通りの答え
「「「全然構わないよ」」」
「……えっ、いいの?」
「やったー! ありがとうございまーす!」
えっと、まさかこんなあっさりとオーケーを貰えるとは思えず、聞き返してしまった。
「だって、ジンだもんね」
「ジン君だもんねー」
「ジン様ですから」
「先輩、いったい何をしてきたんですか?」
うぐっ!? ま、まさか、ここで僕だからという言葉を聞くことになるとは。
しかも、羽柴には面倒くさそうな視線を向けられてしまっている。
「べ、別に、何もしてないよ? ただ、たまーに自重しないで頑張ってただけだからな?」
「ジンの口から自重って、久しぶりに聞いたね」
「ジン君って自重したことあるの?」
「自重という言葉を使うのには無理があるのでは?」
「……ほんっとうに、何をしてきたんですか?」
「だから何もしていないって! 三人も酷くないかなあ!?」
慌てて否定を口にすると、ユウキたちは顔を見合わせて笑った。
僕が怒った顔をしていると、今度は何故か羽柴まで笑い始めた。
「なんでお前が笑うんだよ!」
「だって、先輩がこんなにいじられるなんて、初めて見ましたよ!」
「う、うるさいな! くっそぅ、俺の威厳がぁ……」
今さらではあるが、羽柴にだけは舐められたくないぞ。
「と、とにかく! 一緒に行くならさっさとここを出るぞ! まだ外にも仲間が……って、そうだ!」
「どうしたんですか、先輩?」
ヤバい、忘れてたぞ!
ダンジョンの外にも羽柴が配置した魔獣がいるはずだ。そして、そいつらはカズチたちを狙っているかもしれない!
「は、羽柴! ダンジョンの外にいる魔獣を止められるか? 外にも仲間がいるんだよ!」
「あー、それなら大丈夫ですよ?」
「……えっ? そ、そうなのか?」
「はい、大丈夫です」
……いや、なんでそんな自信満々なの? ブリザードマウンテンに入った時は結構襲われたんですけど?
「先輩たちがダンジョンに来てくれたので、外の魔獣は何もしてませんよ?」
「……マジで?」
「マジです」
「…………そ、そっか~! あー、焦って損したわ」
「うふふ。先輩ってここでも仲間想いなんですね」
「あぁ? 何がだ? 会社じゃあ、自己中心的に動いていたけど?」
羽柴の言葉に疑問を抱いた俺は首を傾げながら問い掛けた。
「だって、私がミスをしたら助けてくれましたし、他の後輩や先輩のミスまで助けてたじゃないですか」
「そうだったか? ……ぜんっぜん覚えてないわ」
「そうだったんですよ。だから、なーんか嬉しくなっちゃいました」
うっ! ……こいつが羽柴だとわかってはいるが、美少女のまま笑顔を向けられると、非常に心外だがドキッとしてしまう。
「……ま、まあ、大丈夫だとわかっても、なるべく早く安心させたいしな。さっさと戻ろう」
「ね、ねぇ、ジン? 魔王とよくわからない会話をしてたけど、なんだったの?」
……あっ、そういえば普通に羽柴と日本のことを話してたわ。
まあ、そろそろ伝えなきゃと思ってたから構わないけど、二度手間はしたくないからなぁ。
「あー……カズチたちのところに戻ったら説明するよ。ここで説明しても、あっちでもってなりそうだから」
「その方がいいですね」
「そんなに複雑なことなの? まあ、魔王を連れていくんだから、そっか」
いや、複雑ではないんだよ。ただ、衝撃的すぎて質問攻めに合いそうなだけなんだよね。
「まあ、そんなところかな」
「わかったよ」
「そういうことなら、さっさと戻りましょうか!」
「そうですね。大丈夫ということですか、吹雪はありますし、実際のところ何が起きるかわかりませんからね」
マギドさんの言う通りだ。
羽柴が配置した魔獣は大丈夫でも、本来ここに生息している魔獣だっているはずだ。
魔法具を渡してはいるけど、何が起きるかは本当にわからないもんね。
「あっ! そういうことなら私に任せてください!」
「なんだ? 近道でもあるのか?」
「はい! 残りのポイントで、脱出の魔法陣を作りますね!」
「「「「……はい?」」」」
「はい! できました!」
「「「「早くないかな!?」」」」
……ま、まあ、早く脱出できる分には問題ないか。
というわけで、僕たちは魔法陣を使って一瞬のうちにダンジョンから脱出したのだった。
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