第2章:生産をやらせてください! 切実に!

目覚めと歴史

 打ち上げでドンチャン騒ぎした翌日、僕は一の鐘で目を覚ました。

 大人組と違ってお酒が飲めないのと、病み上がりということで早めに帰されてしまったからだ。

 まあ、打ち上げの後半からは大人組の介護みたいになっていたからよかったけど。

 同じベッドに寝ているガーレッドを起こさないようにベッドから抜け出すと、椅子に腰掛けてホームズさんから貰った本を手に取る。

 手に取ったのは歴史本だ。

 僕がこの世界に来てから今日まで、ほんの数日しか経っていないが、あまりにもこの世界のことを知らなさ過ぎる。

 鍛冶や錬成の本も気になるが、今後ケルベロス事件みたいなことに巻き込まれないよう、この世界について知っておくべきだよね。

 歴史本のタイトルは--『王都ベルハウンドの過去と今、そして未来へ』だ。

 ……今更ながら、王都の名前がベルハウンドって知りましたよ。

 表紙をめくり、文字に目を通していく--。


『王都ベルハウンド、それは広大なラジェット大陸の中央を支配する大国ベルドランドの都である。

 だが、元々は小さな村を起源にしている。周囲にある大国同士の争いに巻き込まれながら細々と村を大きくしていき、町となり、都市となり、今の王都と呼ばれるまでに成長した。

 大国と言われているベルドランドは、ベルハウンドありきの国と言ってもいいだろう。

 我々はベルハウンドが王都と呼ばれるまでに成長した、その軌跡をここに記したいと思う』


 ……うん、なかなかに読みたくなくなる出だしだね。

 だけど、耐えてみせよう。僕はやると言ったらやる男だ! ……そのはずだ。


『ラジェット大陸は混沌の時代にあった。大国だけではなく、小国をも巻き込んだ紛争が毎日のように、至る所で勃発していた。

 亡くなる国がある一方で、新たに築かれる国もある。

 ベルハウンドはそんなどこにでもある一つの国の小さな、とても小さな村だった。

 ならば何故ベルハウンドが町となり、都市となり、王都に成り得たのか? それは、一人の先導者が現れたからである』


 先導者? そういう人って、普通は王のところに行かないか?

 当時の王があまりにも愚王だったとか、なのかな?

 ……いや、それでもそんな人が小さな村を率いて王都に押し上げるなんて、普通ならば考えられない。

 それこそ、ゲームの世界じゃないか。


『先導者は自らの知識を持って田畑を耕し多くの食料を確保、更には当時の考えでは思いつかないようなアイデアで便利な道具、重厚な建造物、多種多様な娯楽品を披露して村民を盛り立てていった。

 その中でも特に驚異的だったのが、武具作成である。

 先導者は自らのスキルを用いて強力な武具をいくつも作成し、ベルハウンドへ提言した--愚王を討ち、新たな王を目指そうじゃないか--と。

 当然、ベルハウンドの村長や村民は迷いに迷った。だが、先導者は彼らを納得させるためにさらなる行動を起こす。

 強力な武具を持って周囲の村々を巡り、巻き込んで、愚王を討つために行動しようと呼びかけたのだ。

 村々はベルハウンドの繁栄を羨ましく思っていた。自分の村にも同様の繁栄が望めるのならと、彼らが先に立ち上がり、ベルハウンドの村長と村民を説得し始めた。

 結果、ベルハウンドも立ち上がったのだ』


 ……この先導者、明らかにおかしいよ。

 ベルハウンドから説得するんじゃなく、周囲の村々から説得って、これじゃあベルハウンドの人たちは断りたくても断れないじゃないか。

 これはまるで、と僕の目には写ってしまう。


『先導者は村々の協力を得て更に多くの武具を作成して、その時に備えさせた。

 ベルハウンド程とは言わないが徐々に村々も今まで以上に繁栄し始めた時、先導者は行動を起こす。

 自らが先頭に立ち愚王へ宣戦布告したのだ。

 当然、愚王は怒りを露わにして国軍をベルハウンドと村々へ向かわせた。

 強力な武具があるとはいえ、村民たちの殆どが戦の素人である。恐怖に体を震わせるのは仕方がない。

 だが、先導者は自らの戦う姿を見せて彼らを奮い立たせた。

 圧倒的な魔法で国軍を一掃してしまったのだ。

 あれは土属性魔法だったのか、それとも火属性魔法だったのか、いまだに解明されていない。

 突如として顕現したのが、空から降り注ぐ豪炎を纏った岩石だったのだ』


 ……ゲームによくあるメテオってやつじゃない?

 この一文を読んで僕は確信した。この先導者、だ。

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