ルルへのお土産
僕はその足で食堂へと向かった。
お腹が空いていたというのもあるが、一番の目的はルルにお土産を渡すことだ。
「ルルー!」
「ジンくん! おかえりなさい、戻ってきてたんだね!」
ちょうど厨房から出てきていたルルに声を掛けた。
「ついさっき戻ってきたんだ。今は……忙しそうだね」
「お昼時だからねー。もう少ししたら休憩に入れると思うんだけど――」
「ルルは先に休憩に入っちまいな!」
僕の声が聞こえたのか、厨房からミーシュさんが顔を出してそう口にしてくれた。
「いいんですか?」
「ジンが帰ってきたんだったら、一緒に食事をした方が楽しいだろう?」
「あ、ありがとうございます!」
ミーシュさんは笑いながら厨房に引っ込んでしまった。
僕は注文をルルに伝えてテーブルに移動すると、出来上がった料理はルルが持ってきてくれた。その数はもちろん二つ、そしてガーレッド用の新鮮な野菜や果物もだ。
「ん~~! やっぱりミーシュさんの料理は美味しいね!」
「そうだよねー。私、毎日料理長の料理が食べられて幸せだよー!」
「ビギャビギャギャー!」
そんな何気ない会話を楽しみながら食事を終えると、僕は魔法鞄からルルへのお土産を取り出した。
「これ、ルルに似合うと思って知り合いになった鉱石店で買ってきたんだ!」
「うわー! とっても綺麗なペンダントだね! 本当に貰っていいの?」
「もちろんだよ。ルルが貰ってくれなかったら、捨てるからね?」
冗談でそう口にすると、ルルは笑いながら受け取ってくれた。
「……ねえ、付けてみてもいいかな?」
「もちろんだよ!」
ルルは髪をあげてペンダントを首に通してくれた。……うん、やっぱり似合っている。
ルルの柔らかい桃色の髪と、胸に輝く赤色の鉱石。
身に付けている洋服ともマッチしているし、問題なさそうだ。
「……ねえ、ジンくん。似合ってる?」
「うん。とっても似合っているよ!」
「ピキャキャーキャー!」
「うふふ、ガーレッドちゃんもありがとうね!」
少し恥ずかしそうにしているルル。
僕たちは休憩が終わるまでラドワニでの出来事を話して聞かせ、そして食堂を後にした。
※※※※
最後にゾラさんのところへ――と思っていたのだが、どうやら外に出ているようですぐにお土産を渡すことができなかった。
その為、部屋に戻り少しだけゆっくりして帰りを待つことにした。
「……僕の部屋も本当に殺風景だなぁ」
ユウキがホームズさんの机をそう言っていたように、僕は部屋が殺風景だ。
ということで、みんなへのお土産とは別に自分の部屋に飾る用のインテリアを並べていく。
とはいっても数はそこまで多くはなく、気に入った三つのインテリアのみ。
「これは机の端っこに置いて、これは棚の方だな。最後にこれは、ベッドの上の方に……うん、いい感じじゃないかな!」
まず机に置いたのは青い輝きを放つ鉱石である。
不思議なもので、これは光を溜めておける性質を持っているようで暗くすると淡く青い光を放つのだとか。
真っ暗でも問題はないのだが、寝る時に少しでも光があると安心できるのだ。
次に棚に置いたのは赤い輝きを放つ鉱石。
こちらは単純に見て楽しむ為に購入したのだが、形がまさに原石と言わんばかりに歪でありながらもとても美しく、見ていて飽きないのだ。
時折、棚から移動させて眺めているというのも悪くはない気がする。
最後にベッドの上に置いたのは黄色い輝きを放つ置物で、こちらは加工がされておりリーリさんのお店で購入した物だ。
円柱型で錬成されており、出っ張りも一切なくとても触り心地が良い。
ガーレッドもとても気に入っているようで、今も触りたいのか鞄の中でパタパタと動いていた。
「っと、ごめんね。先に出してあげればよかったよ」
「ピキャー! ……ピー、ピピー」
せっかく置いたのに、手に取ってベッドの上で遊び始めちゃった。
……まあ、可愛いからいいんだけどね。
「……それにしても、帰ってきたんだなぁ」
ユウキにフローラさん、マリベルさんにグリノワさんまでいたのだから安心して魔獣素材を手に入れることはできたけど、王都へ行った時以外でカマドをこんなに離れていたのは初めてだ。
ゆっくり他の都市を見て回ったのも初めてだったし、とても有意義な時間だったなぁ。
「……やっぱり、色々なところに行ってみたいなぁ」
それを実践する為には、やはりゾラさんとソニンさんに恩返ししなければならない。
今回だってソニンさんの指導の下でラドワニまで行ったのだ。
「……よし、もっと積極的にやれることはやっていこう。そして、二人の助けになるんだ!」
僕がそう決意した直後、部屋のドアがノックされた。
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