冬支度②

 使ってくれるかは分からないが、ホームズさんには眼鏡置きを作ってみた。

 仕事中に外すことはないと思うが、自宅では目を休める為に外しているかもしれない。実際王都ではじょ……女装を、した時に、眼鏡を外して行動してたもんな!


「……何を笑っているんですか?」

「……す、すみません、思い出し笑いです!」


 まさかお礼の品を手渡す時に女装のことを思い出すとは、完全に不覚でしたよ!

 とはいえ、気を取り直した僕は眼鏡置きだと説明してホームズさんに手渡した。

 素材はヒューゴログス、最大限に薄くしたことで薄緑色が透けてとても美しく仕上がったと思っている。


「二人にお渡ししていた花の置物も美しかったですが、こちらも素晴らしい出来ですね」

「剣とかも考えたんですが、キャリバー以上の剣を打てる自信がなかったので無難に置物をと」

「ふふふ、コープスさんならキャリバー以上の剣も打てると思いますが、こちらもとても嬉しいです、ありがとうございます」


 眼鏡を外して一度入れてくれたのだが、眼鏡の縁が内側に当たり『カラン』と心地よい音が響いてくれたし、大きさも申し分なくベッドの上にも置けるだろうし、やはり満足の出来だな。


「では、私からもコープスさんに今年一年のお礼の品をお渡ししましょうか」

「えっ?」


 まさかホームズさんも同じことを考えているとは思わなかった。

 ホームズさんは自身の魔法鞄から小さな箱を取り出して僕に手渡してくれた。


「……開けてもいいですか?」

「はい」

「ピキャー?」


 ドキドキしながら箱を開けると、そこには僕の拳ほどの大きさがある銀色の光沢を放つ素材が入っていた。

 その素材を目にした途端、僕は目を離すことができなくなりただ見つめることしかできないでいる。


「……ピキャー!」

「あっ! ご、ごめん、ガーレッド」

「ピッキャキャー!」


 ガーレッドの声で我に返ると、箱の中の素材をガーレッドにも見せる。とても嬉しそうな声をあげてまじまじと見ているのだが、僕は視線を素材からホームズさんへと移した。


「あの、この素材って、もの凄く高価で質の良い素材じゃないですか?」

「やはり気づきましたか。これはメテオストーンと言って、出所不明の謎の鉱石なんです。一説には隕石ではないかと言われており、そこからメテオストーンと名付けられたものなんです」

「メテオストーンですか」


 以前にユウキからオリハルコンを貰っている。

 ……なんだか、手元にもの凄い素材ばかりが集まっている気がするなぁ。


「ブレイヴソードもとても良い剣でしたが、これを使って剣を打ってもいいと思いますよ」

「ユウキに二刀流をさせるつもりですか?」

「ははは、確かにそうですね。予備の剣で使うような素材ではないですが、コープスさんが渾身の一振りを打つ相手はユウキしかいないと思いましてね」


 ……まあ、ホームズさんの言う通りなんですけどね。

 元々はオリハルコンを使って唯一無二の一振りを打つつもりだったんだ。ブレイヴソードは成り行きで打ったようなものだし、もしユウキが望むならオリハルコンやメテオストーンを使って剣を打ってもいいかもしれない。


「……っていうか、これじゃあ割に合わないですよね!?」

「これはお礼なんですから、割に合う合わないは関係ないですよ」


 笑いながら言っているけど、いったいいくらしたんだろうか。

 気になるけれど、どうせ聞いても教えてくれないだろうから聞かないことにした。


「……来年も、手伝えることがあったら手伝いますからね!」

「いや、そんな声を大にして言われても」

「そうですけど! こんな良いものを貰ったらね!」

「助かります。他の方々のところにも行かれるのですか?」


 いつも通りのホームズさんに、僕はゾラさんとソニンさんが本部にいるかを聞いてみた。


「ゾラ様は外出していますが夜には戻ってくると思います。ソニン様は私室にいるはずですよ」

「分かりました、ありがとうございます!」


 僕は事務室を出ようとしたところで一度振り返る。


「ホームズさん、今年一年お世話になりました。来年もよろしくお願いします」

「こちらこそありがとうございました。よろしくお願いします」


 年末の挨拶を済ませた僕は、そのままソニンさんの私室へと向かった。

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