二匹はどこに向かうのか?
二匹が姿を消した後も、僕たちは特に気にする様子もなく一休みだ。
というのも、この流れは最近のお約束になっており、二匹にとっても気分転換やお腹を満たす大事な時間になっている。
「友達と行動できるっていうのは、人間でも大事だもんね」
「食事もそうですよ、ジン様」
「まあ、最初は驚いたけどね」
「フルムの白い毛並みが真っ赤になってたもんね……口周りが特に」
これはガーレッドにも言えることだが、綺麗な白と青の模様をしているフルムが特に目立っていたんだよね。
二匹は森の奥に潜んでいる魔獣を狩り、そのまま食事を楽しんでいる。
以前にマリベルさんに指摘されたことを、僕もユウキも二匹の為に守っているのだ。
「ジンがいなかったら、洗うのも大変だっただろうな」
「ジン様は本当に、色々な魔法を開発されてしまわれますよね」
「でも、生活をよくする為に考えただけなんだよなぁ」
これも以前から思案していたものである。
日常で魔法を使う姿をあまり見かけてこなかったので、生活の中に取り入れられればと思っていたのだ。
まあ、クリーンに関しては単一の属性では無理だと判断し、僕だけしか使えない三属性併用のままになっているんだけどね。
「キャラバンで色んな土地に行くことになっても、ジンがいたら清潔感は保てるね」
「僕は洗濯専門じゃないんだけど?」
「女性には大事な部分なので、よろしくお願いします、ジン様」
「……了解でーす」
二人が冗談で言ってくれていることは分かっているので、僕たちは笑いながら話をしている。
そして、キャラバンについても二人は同行してくれると言ってくれていた。
最初はユウキだけに声を掛けていたのだけど、フローラさんと付き合い始めたことで断りを入れようとしていたのだ。
しかし、ユウキがフローラさんに話していたようで、結果としては二人とも同行するという運びになった。
「でも、本当にいいの? 二人は中級冒険者だし、ユウキに至っては上級昇格を最速で狙える位置にいるんでしょう? わざわざ面倒なキャラバンに同行するメリットなんて、どこにもないよ?」
「何度も言わせないでよ」
僕はユウキに何度も確認を取っている。
だって、本当に二人にメリットがないことなんだもの。
「僕たちは友達じゃないか。それに、僕もフローラさんも、ジンに恩を返せたとは思っていないんだよ」
「何もなくても、私たちは同行しましたけどね」
「それを言ったら、僕だって二人には大きな恩が山のようにあるんだけどなぁ」
そして、毎回のように同じ答えが返ってくるのだ。
そろそろ怒られるんじゃないかと思っているが、二人の未来を考えるとデメリットしか見えてこないので、出発するその日までは何度でも聞いてやろうと思っている。
「しかし、カマドも平和になったものだねぇ」
「いや、これが普通の日常だと思うよ?」
「ジン様の日常が、非日常だっただけですよ?」
「……僕の日常も、平和になったものだねぇ」
「「……はぁ」」
い、言い直したんだから、溜息をつかなくてもいいじゃないか。
「ビギャーン!」
「ガウガウ!」
おっ! いいタイミングで二匹が帰ってきたようだ。
「どれどれ……うん、今日も見事に赤く染まっているな!」
「ビギャ!」
「フルム、ちょっとは上手な食べ方を覚えようよ」
「ガウ?」
そのままクリーンを発動して二人についた血のりを落とし、そして滅菌消毒を行い、霧で洗い流していく。
……うんうん、二匹は清潔でいてくれた方が可愛いし、格好いいよ。
「そろそろ戻る?」
「そうだね。調査範囲は終わっているし、長居する必要もないかな」
「新人冒険者にも、仕事を残しておかないといけませんからね」
おぉ、さすが中級冒険者。言うことが違うねぇ。
そんことを口に出してしまうと、これまた時間を取られてしまうと思い心の中にしまっておく。
帰りは話をしながらになるので、僕もガーレッドも徒歩である。
僕もそうだけど、ガーレッドもフルムと話ができるのを楽しんでいるので、問題はないのだ。
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