無属性魔法と魔獣の処分方法
ユウキは持ってきたカバンに証明部位を突っ込むとこちらに駆け足で近づいて来てくれた。
この時は普通の速度だったので無属性魔法は使っていないようだ。
「この数を一人でとは、なかなかに実力者のようじゃのう。ライオネル家の出というから戦闘は苦手かと思っておったわい」
「まだまだです。無属性がなかったらこんなに上手くもいきませんし」
「でも、ものすごく上手に使いこなしていたじゃないですか! 凄いですよ!」
おぉ、これがあのルルなのでしょうか。腕を振りながらキラキラした瞳でユウキを見つめているよ。
これは……まさか……。
「んっ、どうした?」
「……世の中にはまだ女性はたくさんいるさ」
「いや、なんの話だよ!」
あれ? カズチが失恋した話じゃなかったっけ?
あぁ、無属性魔法についてだったね。
「本当に凄かったよ。僕も無属性があるんだけど、ユウキに教えてもらいたいと思ったんだ」
「僕に? クランの人の方がいいんじゃないかな。僕だと継続して教えてあげられないし。それに護衛の仕事もあるからなぁ」
「無属性を持ってる人がここにいないんだよね。せっかく魔法の練習をしに来たんだから習いたいんだよ、お願い!」
僕の必死のお願いにユウキはゾラさんに視線を向ける。
護衛仕事を放棄して魔法を教えてもいいのか、ここは依頼主であるゾラさんの判断に任せられるからだ。
ここで勝手に請け負わないあたり、やはりユウキはちゃんとした冒険者だと思う。
「この辺りの魔獣は狩り尽くしたようだし構わんぞ」
「さすがゾラさん、男前だね!」
「分かりました。でも簡単なことしか教えられないけどいいかな?」
「構わないよ! ありがとう!」
ゾラさんとユウキから了承をもらえたので僕は早速先ほどの場所に戻ろうとした。
しかし、そこにユウキから声が掛かる。
「ちょっと待って、先に魔獣の死体を処分していいかな」
「いいけど、どうして?」
「冒険者の基本なんだ。魔獣の死体を放置しておくとその魔獣を食べるために他の魔獣が集まってくる。だから倒した魔獣は必ずその場で燃やすか、埋めるかしないといけないんだ」
魔獣を食べる魔獣、あまり見たい光景ではないね。
それなら仕方ないと見ていると、ユウキは証明部位を突っ込んだカバンから一枚の紙を取り出した。
「あっ! それって
「そうだよ。僕は火属性も土属性も持ってないから魔護符に頼るしかないんだ。消耗品だけど仕方ないからね」
「だったら僕が燃やそうか? もったいないし」
「えっ、でもいいのかな?」
「僕の魔法の練習だと思ってよ」
そう言って比較的見た目が良い狼型魔獣のラーフに右手を突き出す。
「……なんでみんなそんなに離れるかな」
「えっ? えっ?」
困惑するユウキを置き去りにして三人は五歩以上の距離を空けて離れている。
「いやー、さっきの炎を見たらのう」
「成功するか分からないしな」
「ピキュ」
「ほら、ユウキくんもこっちおいで」
「えっ、あっ、はい」
「……みんな酷い」
僕だってちゃんとできるし!
やけくそにならないよう火力に注意して、炎がラーフに命中するように。
魔獣を燃やす火力ってどれくらいだろう。……まあいっか。
「燃えろー」
直径三〇センチくらいの火球、右手前方に顕現させて、真っ直ぐに飛ばすイメージ。
……よし、火球ができたぞ。
……後は照準を合わせて。
……発射!
--ドンッ!
「「「「……」」」」
「……大成功だね!」
「「「「違うだろー!」」」」
だって、燃えたじゃん! 跡形もなく燃えたじゃん!
「もっと丁寧に燃やさんか! 爆発させてどうするんじゃ!」
「爆発なんてさせてないよ! ただ火球を飛ばしただけだよ!」
「それがやり過ぎなんじゃ! 普通はこうするんじゃよ!」
言いながらゾラさんがゴブリンに手を突き出すと、胴体から徐々に炎が広がり全身を包んだかと思えば一気に燃え上がると完全燃焼されていた。
「そんな細かな操作はまだできません」
「あれだけの火力をひと塊りにして撃ち出すほうが難しいわい!」
僕とゾラさんがギャーギャー騒いでいる横ではカズチがユウキの肩を叩いている。
「なっ? 離れててよかっただろ」
「……そ、そうだね。ジンって、魔法の練習いらないんじゃないの?」
そんなことないからね。もしそうならこんなことにならないから!
だけど、僕の普通とみんなの普通がズレてるのが分かったので、まずはそこから擦り合わせていかなきゃだ。
でもまずは--。
「無属性魔法は別だからね! 絶対に教えてよ!」
「なんか恐ろしいことを請け負った気がするんだけど」
そんなことはないんだよ。無属性は僕が鍛冶をするためにも必要なんだから。
そのうちユウキにも武具を作ってあげるからね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます