たまの休みに

 そうそう、ほとんどの時間を仕事に費やしているのだが、休みもちゃんともらっている。

 ブラックな職場で働きたいなんて思わないもの。

 そんな時にはガーレッドと外と遊ぶことが多いのだが、大きくなったことで部屋の中で遊ぶことが難しくなっている。

 なので、ユウキやフローラさんと臨時パーティを組んでカマドの外に行く依頼を受けたりしていた。

 それって休んでるのか? ってカズチ言われたのだが、僕としてはガーレッドの背中に乗って飛ぶことが気分転換になるので問題はないのだ。

 それに、遊びながら依頼もこなしてお小遣い稼ぎをできるので一石二鳥である。


「ユウキ! 前方1キロ先にゴラリュが三匹いるよ!」

「了解! フローラさん、いける?」

「もちろんです!」


 いつもならユウキが前線に立って魔獣を仕留めるのだが、今はフローラさんの攻撃魔法を訓練している。

 火属性を持っているので、魔獣の死骸を処理するだけではあまりにももったいない。

 回復スキルを持っているので後衛というイメージが強いものの、本人はユウキと並んで戦えるくらいに成長したいと考えている。

 ……青春だねぇ。

 ちなみにだが、ユウキとフローラさんの関係はこの一年で進展しており、お付き合いを開始している。

 諸手を上げて喜びお祝いをしたのだが、僕としてはユウキを取り合うフローラさんとルルを想像していたのでちょっとだけ予想外だった。

 だって、僕以上にルルがとても喜んでいたし、お祝いのケーキも自分が用意すると言ってきかなかったくらいだったもの。

 まあ、これでカズチにも良い芽が出てきたと考えれば、万々歳なのかもしれない。


「いきます――ファイアーアロー!」


 フルムがゴラリュの背後へと回り込み、さらに射線上に三匹全てが入る位置取りをしてくれたことで、フローラさんも狙いやすかっただろう。

 鋭く放たれた三本の炎の矢がゴラリュの首に突き刺さり、一気に燃え上がらせた。

 しかし、一匹は当たり所が悪かったのか燃えながらもフローラさんのところへ突っ込んでいく。


「フルム!」

「ガルアッ!」


 そこへ放たれたのがフルムの雷撃だった。

 足元に円形の青白い光が現れると、一筋の光が迸りゴラリュを捉える。

 ビクッ! と一瞬、体が跳ねたかと思えば、そのまま倒れて燃えカスになってしまった。


「す、すみません。ユウキ様、フルム」

「いいえ、同時に放って全てを命中させることの方が難しいですから」

「ガルラアッ!」


 申し訳なさそうにしているフローラさんに一人と一匹がフォローしているところを見ると、バランスの良いパーティだなと思ってしまう。


「お疲れ様ー」

「ピギャギャー」


 ユウキたちの横に降り立った僕とガーレッドが声を掛けると、みんなが笑顔で迎えてくれた。


「ジンとガーレッドがいると、森の調査もはかどるよ。ありがとう」

「空から指示を頂けると、これほど楽なんですね」

「でも、森だと木々に隠れている部分も多いし、二人も気をつけてね」


 まあ、僕が言わずとも気をつけてくれているんだよね。

 以前にもこの形で依頼を受けたのだが、木々の影に隠れていた魔獣を僕が見落としてしまったのだが、ユウキは気づいていたようであっさりと斬り捨ててしまった。

 あの時は何度も謝り倒したのだが、ユウキは木々に隠れているということも想定していたのだと言ってくれたっけ。


「この調子なら、ユウキの上級冒険者昇格もすぐなんじゃない?」

「冒険者ギルドでは、ユウキ様の最速昇格が叶うかどうか、話題になっていますからね」

「ぼ、僕なんてまだまだだよ。それに、フローラさんやフルムがいなかったら、こうはならなかったんだしね。もし上級冒険者になれたら、みんなのおかげだよ」


 謙遜しているが、ユウキの活躍は僕の耳にも入ってきている。

 中級冒険者に上がった後も、ユウキはダリアさんにお願いして誰も受けたがらないような依頼を積極的に受けていた。

 そのおかげもあってギルドからの評価は更にうなぎのぼりとなり、その姿を見た下級冒険者もユウキを尊敬するようになり、その模範となっている。

 また、冒険者からの評価も高く、護衛依頼などがあると臨時でパーティを組まないかと誘われることも多いのだとか。

 そのままパーティを組まないかと誘われることも多いようだが、何故だか頑なに断り続けている。

 まあ、理由は分かっているんだけどねぇ。


「森の調査はこれで終わり?」

「えっと……うん、そうだね。指定された範囲は終わりだよ」

「今日も問題はありませんでしたね」

「ピギャピギャ!」

「ガウガウッ!」


 僕たちが確認をしていると、ガーレッドとフルムが何やら待ち遠しそうにこちらを見ていることに気が付いた。

 僕とユウキは顔を見合わせて頷くと、二匹に声を掛ける。


「「いってきていいよ」」

「ピギャーン!」

「ガウガウアッ!」


 そして、二匹だけで森の奥へピューンと消えていってしまった。

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