ラドワニの食事
次に僕たちが向かったのはラドワニの食堂だ。
ソニンさんからも言われた通り、食事もそれぞれで食べて構わないということだったので今日は外で食べようとユウキと話していた。
宿屋の料理も気になっていたのだが、明日以降でも食べられるだろうと判断したのだ。
入った食堂ではオススメを主人にお願いしたところで、とても満足できる料理だった。
「この卵料理、ふわふわだね!」
「本当に! カマドでは食べたことないかも!」
料理名は違ったのだが、見た目は完璧なオムレツ。
美味しいとは思っていたが、オムレツの中に入っている噛み応えのある食材がアクセントとなっている。
一緒に出してもらったスープには野菜がゴロゴロと入っているのでとても健康的だろう。
美味しくて健康的、これは最強の組み合わせではないだろううか。
「これは、大正解だね!」
「うん! でもジン、たくさん食堂はあったのにどうしてここを選んだの?」
この食堂を選んだのは僕だ。……いや、正確には僕は反応を見ていただけなのだが。
「ガーレッドがこの食堂に入りたがってたんだよ」
「ピギュギュ! ギュギュンッ!」
「……食べてから喋ろうね?」
「ギュギュ? ……ギュン」
「そういえば、フルムも僕の足をカリカリしてたっけ」
「わふっ!」
ガーレッドもフルムもここの料理には満足したようでガツガツと食べている。
特にガーレッドは口の中に詰め込み過ぎて喋ることができていない。
「ユウキはラトワカンにいつから向かうとか聞いてる? 明日かな?」
「明日の三の鐘には出発するって聞いてるよ」
「……鉱石、採れるかな?」
「鉱石じゃなくて魔獣素材が目的なんだけどなぁ」
「でもさ、リディアさんのところで鉱石を見たら欲しくならなかった?」
「まあ、欲しくはなったけど目的を違えたらダメだよ」
「えぇー! ……よし、魔獣素材を手に入れて、時間があったらソニンさんに聞いてみよう!」
「絶対に怒られると思うけどなぁ」
苦笑しながらそう口にしたユウキを見て、僕は嫌そうな顔を浮かべてしまう。
ソニンさんに怒られるって……うん、もの凄く想像できるから考えたくないんだけど。
「目的を達成したらすぐに下山するんじゃないかな」
「でも、ラトワカンでも野営だって考えているみたいだし、ちょっとは時間を作れるんじゃない?」
「危険を冒してまで?」
「……ユウキ、僕の護衛をお願いね!」
「僕を巻き込まないでよ!」
「ピキャーキャー!」
「わふわふっ!」
「ほら、ガーレッドとフルムもキラキラした鉱石が欲しいみたいだよ?」
「ぐうっ!」
僕の言葉は全否定だったのに、二匹の名前が出たら悩むのかい!
「……ソニン様から許可が出たらだからね?」
「うん! ありがとう!」
食事を終わらせて食堂を後にした僕たちは、そのまま宿屋へと戻って行った。
宿屋の食堂にいると思っていたソニンさんだが、どうやら出掛けていたようだ。
ベルリアさんに話を聞くと、知り合いのお店に顔を出しに行ったのだとか。
「ぼ、僕も行きたかったのに!」
「まあまあ、自由に行動をしていたのは僕たちなんだからさ」
「そうだけど、宿屋を出る前に一言欲しかったよ」
「帰りにも顔を出しに行くかもしれないし、後からでも大丈夫じゃないかな」
「……そうだね、うん、そうだ」
肩を落としている僕を見て、ユウキは首を傾げながら声を掛けてきた。
「そんなに落ち込むことなの?」
「カマドでは鍛冶屋は沢山あったんだけど、錬成屋は見たことなかったんだよ。探せばあると思うんだけど見つけられなくて。だから一度は見てみたいんだよね」
それにソニンさんの弟子だった人の錬成屋だよ? 絶対に凄い人じゃないですか!
カズチと同等か、それ以上の実力者かもしれないし気になるよね!
「うふふ、ソニン様ならお願いしたら連れて行ってくれると思いますよ」
「ベルリアさんはソニンさんのお弟子さんのことを知っているんですか?」
「何度か顔を合わせたくらいですね。ですけど、ソニン様のことは少しは知っています。でも、そこはジン君の方が知っているんじゃないですか?」
確かに、ソニンさんなら本当にダメなこと以外は許してくれる気がする。
それにお弟子さんに会いたいということは事前に伝えているので、その機会を作ってくれるかもしれないしね。
「今日はもう休まれますか?」
「そうしようか」
「うん。フルムもガーレッドも眠そうだしね」
ユウキの言葉を受けてガーレッドに視線を向けると、鞄の中でウトウトと顔を前後に動かしている。
「可愛いものですね。もしよろしければ、明日の朝ご飯は食堂でどうですか? 可愛い霊獣向けの料理もご用意できると思いますし」
「霊獣向けの料理なんてあるんですか?」
今までは僕たちが食べる料理と同じものを食べさせていた。
霊獣向けの食べ物なら晶石があることは知ることができていたけど、料理でもそんなものがあるとは知らなかった。
「魔獣の食材を使った料理ですね。もちろん普通の料理だって食べられますけど、霊獣が好きな物は魔獣食材なのよ」
「やっぱりそうなんですねー」
「僕は冒険者としてフルムにパートナーになってもらいたいって思っているけど、ジンは違うもんね」
「うん。可愛いままで大きくなってほしいんだよなー」
「それでも、パートナーということには変わりませんよ。それに、私たちだって魔獣の食材を食べるわけですから、そこを忌避することはないと思います」
「……言われてみると、確かにそうですね」
「生きている魔獣を見ているからそう思うかもしれませんけど、食材になってしまえば全て同じですから」
考え方を変えればそうなるのかと納得してしまった。
ベルリアさんからは明日の料理を楽しみにと言われて、僕たちは部屋に戻って行った。
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