護衛はまさかの……
翌日となり、ライオネル家の屋敷に二人の女性騎士がやって来た。
「おはようございます、ジン殿!」
「……えっと……えぇ~?」
うん、まさかのポーラ騎士団長でした。
そして、その後方にもう一人。
「おはようございます、コープス様」
「オレリア隊長まで……えっ? もしかして、お二人が護衛ですか?」
「はい! 私たち二人がいれば、他国の間者など問題にはなりません!」
「もちろんです。私たちならば造作もありません」
まあ、騎士団長と第五部隊長様ですから、そうだろうけども……どうしてオレリア隊長は怒っているんだろうか。
…………あー、そうだった。この人、あれだったわ。
「ポーラ様、あまり男性に近づかれない方が」
「何を言っているのですか、オレリア隊長! 今ここに、目の前に、ベルハウンドを救った英雄様がいらっしゃるのですよ! ここで話を聞かずして、いつ聞くのですか!」
あの、ポーラ騎士団長? そんな尊敬の眼差しでこちらを見ないでください。……オレリア隊長がほら、目の奥が笑ってない視線を向けてきてるんですよ~。
「……ゴホン! それで、コープス様の本日のご予定を伺ってもよろしいですか?」
「あー、えっと、そうですねぇ……ユウキ、どうしようか?」
「本当だったら、シルク姉上がオススメする場所に行こうと思っていたんだけど……さすがにこの状況じゃあ、難しいよね」
「えっ? いいんじゃないの?」
僕がユウキに問い掛けると、さらに後方から声が聞こえてきた。
「でも、いいのかな、シルク姉上?」
「ポーラ姉さんもいるし、オレリア隊長もいれば問題ないでしょう!」
「……あ、姉上ぇ」
溜息をつきながらそう口にしたユウキだったが、シルクさんはニコリと笑いながら断言している。
「それに、ユウキもいることだしね!」
「ぼ、僕をお二方と一緒にしないでください!」
「ほほう! ユウキ殿は上級冒険者でいられるか!」
「ち、違いますから! 僕は中級冒険者で、そこまでの実力は持っていませんよ!」
「ご謙遜ですね! ……むむむ、これは、力試しがしたくなってきました!」
ポーラ騎士団長は、脳筋のようですね! 完全に予想外ですけど!
「あら、だったらちょうどいいんじゃないかしら?」
「ど、どういうことですか、シルクさん?」
ちょうどいいって、ものすごく不吉な物言いなんですけど?
「私が案内しようとしていた場所は、王城にある騎士団の稽古場よ」
「……それって、観光名所とかじゃないですよね! 一般人は入れない場所ですよねえ!?」
「でも、楽しいところよ? 私だって、時々足を運んでいるもの。この剣、見たことあるわよね?」
そう口にすると、シルクさんは腰に下げていた剣を抜き放つ。
それは、確かに僕が見たことある……というか、僕が打った
「こんな物を見つけたら、振るわずにはいられないわよね!」
「……でも、それはユージリオさんの依頼で打ったんですが?」
「うふふー、おねだりしたのよ!」
……えっと、うん、確かに有事の際には女性がとか思ってたけど、まさか女性騎士ではなく、シルクさん自身が剣を握るとは思っていなかったよ。
「では、参りましょう! 騎士団の稽古場へ!」
「「……は、はあぁぁぁぁぃ」」
今日はカズチとルルは屋敷で休むことになっている。昨日の出来事があったのだから、仕方がない。
というわけで、本日の同行者はユウキとフローラ、そしてリューネさんだ。
「私も行っていいのかしら?」
「なんだったら、リューネさんも模擬戦とかしてみたらどうですか? 精霊魔法でボコボコに――」
「リューネ殿は精霊魔法の使い手なのですか!」
……あちゃー。これ、僕がやっちゃったパターンですか?
「であれば、国家魔導師をお呼びしましょう! 彼らを鍛え直していただけませんか!」
「いやいや! 精霊魔法が使えるからって、国家魔導師に勝てるはずが――」
「では参りましょう! あははははっ! これは楽しくなってきました!」
「……ポーラ様」
おぉ、ポーラ騎士団長大好きなオレリア隊長もさすがに呆れて――
「楽しそうなポーラ様、美しすぎます!」
……あー、こりゃダメだ。
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