魔族降臨(王都学院)
第315話 チートと絆を以って
壇上に浮かぶ黒いローブ姿の男。
そこから発せられた言葉を素直に理解出来たものは少ない。
そもそも魔族という存在自体、ライムサイザーしか目の当たりにしていないのだ。
架空ではない、ということは分かっていても、ここまで悍ましい者がいることを想像はできておらず、この場でやっと肌で感じ取ることとなった。
竜とは違う圧倒的な存在感に、生徒達は押しつぶされそうになる。
魔族の創造主と名乗った相手に、会場の誰もが動けず――
「こっ……ふざけるなよ!」
しかし、生徒の中から威嚇の声が聞こえた。
勇者候補の一人である藤原である。
「アビリティ――
「まて藤原、王女が――」
「大丈夫あれは偽物!」
感情のままに藤原が魔法を放つ。
誰かが王女の存在を気にかけたが、六眼で本物のステータスが見えている両木が偽物だと告げる。
「ならば僕も加わろう!」
生徒の中からさらに声を上げたのはネメア家次男坊であるクロノスだった。
「空間魔法――
振るった杖から炎の蛇が飛びだし、魔砲に絡みつく。一種の合わせ技の状態に変化する。
クロノスが迷わず天級魔法を使ったのは、かつてツムギとの戦いで感じた嫌な感覚のせいである。
有無を言わせない強さを、目の前の黒ローブから感じ取ったのだ。
そして、敬愛するエル王女を騙っているものが目の前にいることは、王国に従える貴族として見過ごすことのできない行為である。
レイミアも悟った通り、壇上のエルはクラヴィアカツェンが成りすましたものだ。
クラヴィアカツェンは飛んできた魔法を避け――その後ろにいたオールゼロに命中した。
「あ、ごめん」
「かまわない。この方が早かろう」
ポンコツを披露するクラヴィアカツェンであったが、しかし誰もそのことを気に掛けることはなかった。
それよりも、オールゼロが微動だにせず、まともに受けた魔法にたいして何一つ反応がなかったことに、勇者候補たちとクロノスは絶句した。
「効いていない!?」
確かに当たった。
クラスメイト全員のキズナリストによって底上げされた魔法が。
当たればほとんどの魔物が即死した力が。
「まるで、ドラゴンの時みたい」
「それはルース・グランディディエのことかな? あれもすでに喰われたか」
ヒヨリの呟きをオールゼロが拾った。闇が彼女の方を向く。
「しかし、残念ながらこれは竜のものとは全く別だ。
君たちは魔法とステータスの関係をどこまで理解出来ているかな?
本質を見極めなければ意味がない。
君たちには、我のステータスが見えているだろう?」
ステータス、と言われて光本は「異界の眼」を発動させた。
魔族の創造主、であればどれだけの力を持っているのかと。
しかし――
「なんだ……それは」
映し出されたステータスに、光本たちは戦慄する。
「セツナ!」
「……もしあのステータスに驚いているなら。
きっと私の見えているものと変わらない」
「まさか……」
「あのステータスは嘘偽りなく、あの魔族のもの」
両木の「
しかし、今回ばかりは他の者と変わりなかった。
◆オールゼロ
種族 :魔族
レベル:0
HP :0/0
MP :0/0
攻撃力:0
防御力:0
敏捷性:0
「さあ勇者候補諸君よ。
神によって与えられたチートと絆を以って――我を殺してみよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます