第204話 運命
「魔剣だと!?
ほとんど存在の確認されていない空想上の剣じゃないか!」
カイロスが声を荒らげる。
それに反応したのは、ライムサイザーだった。
「過去の戦記に幾度となく登場するものの、その存在は二本しか確認されていない。実在する魔剣から派生した空想上のものばかりと言われてきた存在」
そして、笑い出す。
「どうだ、これが妖狐族だ!
邪視を生み、魔剣を生み、人類からかけ離れた種族!
当然人類も魔族もそんなの仲間にしたくはない。いつ後から斬ってくるか分からない狂人の種族だからなあ!」
ライムサイザーの言葉なんて耳に入っていなかった。
俺は刀を振るうオウカを見ていた。
「こんな数、スライム1000体の時より怖くないですよ」
そう言ってベリルを斬り捨てていく。
彼女の姿は、とても美しく思えた。
そのひと振りひと振りが、まるで演舞かのように。
ただ、見惚れた。
奴隷オークションで初めて姿を見た時のことを思い出す。
目を布で隠し、まるで人形のように静かに息だけをしていた、名も無き妖狐。
あの時は運良く購入できたのは、彼女が妖狐族で忌み嫌われていたからだ。
俺は嫌いになんかならない。
あの時みたいにステータスを覗いていろんな言い訳なんて、もう必要ない。
正直、一目惚れだったんだ。
自分勝手に、運命を感じていた。
「まとめて消えてください。
秘技――
オウカが刀を振るうと、群がっていたベリルたちが個々に青いキューブに包まれる。
中のベリルたちが破壊しようとするがヒビ一つ入らず、それは徐々に小さくなっていきベリル諸共消失した。
「さあ、終わりにしましょう」
オウカの視線の先に残っているのは一体のベリルのみ。
本体は戦闘を避けて後ろにいたのか。
オウカは刀を持ったまま四つん這いになる。その姿は獰猛な獣を思わせる。
ベリルも片腕を前に出し、そこに魔力を集中させていく。
やがてそれは漆黒の炎となり、ベリルの手から放たれた。
同時にオウカも、
「秘技――
視界が黒に染まる。
突然何も見えなくなった。
その中で一閃、青い光が走った。
視界が元に戻る。オウカがベリルと背中合わせになっており――
ベリルが倒れた。
オウカも身体をぐわんと揺らしてから、両手をついて肩で息をする。
顔には青い痣のような模様が浮かび上がっていた。
「勝った……のか?」
呟いた時、それが間違いだったとすぐに気づく。
殺気が消えていない。
倒れていたベリルが炎に包まれて消える。
同時に頭上から爆発音が響いてきた。
見上げれば、屋根が破壊され、そこから覗く眩しい太陽。
そして、ベリルがこちらを見下ろしていた。
あれが本物か。
「ん、まあ、見事だった。
ベリルの、女に、相応しい。
だから、これを、やろう。
アビリティ――
ベリルが太陽へと腕を伸ばす。
手の平から黒い塊が現れ、それはサッカーボールくらいの大きさになる。
それでも、その魔法が如何にヤバいのか肌で感じ取ることができた。
まるで、小さなブラックホールだ。
「精々、生き延びてみせろ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます