第155話 ウェイ

「さあ、話を理解したなら大人しく寮へと戻るんだな、のけもの君」


 そう言うと、金髪ウェイはシオンの手を取り甲に唇を重ねる。

 キャーと周りの女子から甲高い音が湧き出た。


 ――しかし、シオンはそれをピシャリと払いのける。

 そして、何故か俺の腕に抱きついてきた。


「あたしはこの人と行くから」

「おいおい冗談だろシオンちゃん?

 反抗的なのは可愛らしいけど、だからってのけもの君を利用するのは、自分の品格を下げるってものだ」

「クラスで力量を測ろうとするなんて、あなたこそ程度が知れてるわね」


 ふぅ、とウェイが息をつくと、前髪をかきあげてバサりと煌びやかなフケを飛ばす。


 そして、目付きが鋭くなった。


「じゃあ見せてあげようじゃないか。

 試験で分けられたクラスの差ってやつを」


***


 連れてこられたのは闘技場のような場所。


「ここは実技で使われる場所だ。

 もちろん生徒は自由に使っていい」


 向かい側に立ったウェイが丁寧に説明してくれる。

 俺はそれを聞きながらパラパラと生徒手帳を捲る。


「お、ちゃんと決闘についての取り決めが書いてあるじゃないか」

「決闘は互いが認めたものを掛け合う。

 殺しはなしだ。相手が負けを認めるか、意識を失うかで勝敗を決する」

「やけに詳しいな」

「学院に入る前から知り得る情報だよ、のけもの君」


 俺の無知っぷりが晒されていくだけである。


「今回掛けるのは、シオンちゃんとのお昼で相違ないな?」

「ちょっと! なんであたしが賞品になってるのよ!」

「というか、俺は戦わなくてもシオンとご飯に行く予定だったんだが」

「まったく、Gクラスは空気も読めないときたか。

 ならば問おう、何が望みだ?」

「そうだな……」


 別に戦う理由もないからなんでもいいっちゃいいのだが。

 どうせならいいもの貰いたい。

 と、いい事思いついた。


「――俺とお前のクラス交換、ってのはどうだ?」


 俺は少しばかり笑みを浮かべて提案する。

 ウェイの表情が強ばった。


「正気かい? そんな条件が通るとでも?」

「ダメなら別にいいんだが」

「いやダメじゃないさ。

 驚いたよ、のけもの君はこの僕に勝つ気でいるらしい!」


 ウェイが大声で言うと、ついてきていた女子たちがくすくすと嘲笑を漏らす。


「本当に無知なようだな。

 僕をネメア家の次男と知っての発言か?」

「そんな家知らん」

「世間知らずめ――痛い目に合わないと分からないみたいだ」


 ウェイが右腕を掲げる。

 そこには銀色の腕輪がはめられていた。

 お、次元召喚の腕輪かな?


「貴様には魔法を使うまでもない。

 これは霊獣を呼び出す魔道具。圧倒的な力量差にひれ伏すがいい!」


 お、次元召喚の腕輪だな。

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