第154話 食堂

 今日は午前で終わりということなので、とりあえずシオンに呼ばれた食堂へと赴く。

 試験時みたいな転送に近い魔法扉は学内にないらしい。

 仕方なく廊下を歩いていると、他のクラスの生徒達が俺を見るなり何やら嘲笑や不快そうな表情を浮かべる。

 指定された制服に着替えただけなのだが、どこかおかしいのだろうか。

 みんなと同じ制服である。唯一違うのはパーカーの色くらいか。原因これだな。


 手帳に備わっていた経路図を頼りに食堂へ着くと、意外にも人は少なかった。

 まあ、お昼で終わるからと言って全員が食堂に集まってくるわけもなく。外のお店とかにだって行くだろう。王城に向かう道中では女子が好きそうな可愛いお店もいくつかあったし。

 シオンはそういう所にいかないのだろうか。

 あ、もしかして財布として連れていかれるのか。

 どっちにしろ、シオンの護衛が本来の目的なのだから、ついて行くしかないのだが…………クラスが違う時点で護衛遂行できてなくね?


 と、席についたシオンと隣に立っているオウカを見つけた。


 オウカは黒色のパーカーらしい。魔法によって狐耳がないにも関わらず赤い頭巾を被っているのは習慣のせいだろうか。

 シオンは黄色のパーカーである。


「だから、私はあんたみたいな女たらしと一緒するつもりはこれっぽっちもないの」

「はは、恥ずかしがらなくてもいいんだよ?

 Cクラスの女子みんなでこれからお茶しようっていうんだ。この僕と!

 君も同じクラスメイトなんだから、仲良くしようじゃないか」


 近くではウェイ系みたいな集団が騒いでいる。どの世界でもああいう人種は一定数いるもんだな。


「シオン、待たせたな」

「あーやっときたわ……って、なんでその色なのよ……」

「ぼっちだから?」

「あぁー、慣れすぎて見落としてたわ。

 あんたはキズナリストで測れるレベルを超えてるってのに」

「なんだい、のけもののGクラスが話しかけてくるなんて、世間知らずにも程があるんじゃないか?」

「とりあえずお昼にしかないか? 食堂でも外でもいいからさ」

「そうね、ここだと変な人に絡まれるから外に行きましょうか」

「ちょっと待ちたまえ」


 突然胸ぐらを掴まれた。

 赤い瞳がすごい形相で俺を睨みつけてくる。

 何事かと思いきや騒いでいたウェイ系の金髪男子じゃないか。


「この僕が話しているのに無視するとはいい度胸じゃないか」

「え、なんで俺に話しかけるの?」


 ぷーっとシオンが吹き出した。


「僕は貴様ではなくシオンちゃんに話しかけているんだ!

 貴様が割り込んだんだろ!」

「え、まじかごめん。シオンにもう友達ができてるとは」

「ちょっとそれどういう意味よ。

 ていうか、別にこの人友達じゃないんだけど」


 よく見れば、男も、その後ろの女子集団もみんな黄色いパーカーだ。


「クラス集会の時間だったか。それは失敬」

「さすがGクラス。頭の回転も悪いみたいだな」


 掴んでいた手が離れ、肩を強く押される。


「僕がいま彼女を誘っているんだ。

 貴様みたいな底辺が言葉を発するのもおこがましいと知れ」

「え、でも同じ一年生だろ?」


 上級生ならまだしも、同学年にここまで言われる筋合いはない。


「分からないのか? 貴様は紫でGクラス。

 僕たちは黄色でCクラスだ。

 剣士のAクラスと魔法師のBクラスに続いて優秀かつ財力のある生徒だけが入れるクラスなんだよ。

 まあ、崇高な目標もなく入った雑魚にはわからないだろうけどね」

「なるほど……」


 シオンが言っていた魔法師専攻クラスってのはBクラスのことだったか。

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