第116話 ポンコツ
「ツムギ様、ここは私にやらせてください」
珍しく、オウカが自分から戦うと言い出した。いままでこんなことはなかったんじゃなかろうか。
「できるか?」
「大丈夫です」
「わかった」
オウカが走り出す。
「奴隷ごときに何ができますか!」
宙に浮いた死体がオウカへと襲い掛かる。
しかし――
「どこを狙っているんですか」
オウカの姿が消える。
同時に、数体の死体が地面へと落ちた。
そして、オウカに襲い掛かってきた死体が次々と落ちていく。
「い、一体何が!?」
「オウカちゃんの姿が見えないのに」
お姉さんとおじさんが驚嘆する。
だが、俺にはオウカの姿がはっきりと見えていた。
オウカは一瞬で相手の背後へと移動して攻撃をしている。
最後に残ったのはラベイカの死体。
『アビリティ――シャロウフェロウ』
ラベイカの周辺が何か所も爆発を起こす。
「無駄ですよ!」
しかし、オウカは傷一つなく、ラベイカを背後から切りつけた。
その死体が地面へと転がっていく。
「最後はあなたです、ポンコツさん!」
地へと立ち、ダガーを握ったオウカがクラビーの方へと向く。
「な、なにが……」
「終わりです!」
オウカが接近しダガーを振り上げ――
「オウカしゃーん」
「っ!?」
クラビーの雰囲気が一変した。
それはこれまで見てきたクラビーのものだった。
オウカの動きが一瞬止まる。
同時に、クラビーの口角が上がった。
「ポンコツめ!」
クラビーがオウカへと手を伸ばす。
――が、
「アビリティ――
オウカの後ろに黒い甲冑の騎士が現れた。
黒い剣を振り上げクラビーを捉える。
「なっ!?」
クラビーが手を引っ込めて後方へと下がった。
「黒騎士……なるほど、どうりでオウカさんの攻撃が見えなかったわけですね」
「今さら気付くなど、脆弱な者たちには呆れるばかりです」
アビリティを発動し、クラビーの回答に反応した声。
その主がオウカの頭巾からひょっこりと現れた。
小さな身体をふわりと揺らしながら地面につくと、元の大きな姿に戻る。
「精霊がいましたねえ。すっかり忘れてましたよ」
「だからポンコツと呼ばれるのでしょう?」
オウカが敵に対抗できた理由。
それは、精霊であるリーの力を借りたからだ。
俺はクラビーに対して鼻で笑う。
「
クラビーが何かしら仕掛けてくる可能性を考えて黒夢騎士の準備。
ダメだぜクラビー……いや、クラビィアカツェン。
誰がいて誰がいないのか把握していれば、すぐにわかるお約束の展開だ。
それが読めないようじゃ、まだまだポンコツだよ」
オウカが、クラヴィアカツェンにダガーを向ける。
「さあ、ポンコツさん。本当のクラビーさんを返して下さい」
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