第241話 見えない力
本当に召喚できた。
今までステータスに表示されている形でしか使っていなかった絆喰らいだったが。見えない形で様々な効果を持っていることが確信できた。
暴食、虚飾、そして今回の強欲。
きっと、ステータスの下がる理由も、この見えない力のおかげなのだろう。
カイロスが言っていたな、呪いは見えないから面倒だとか。
『主殿に虫がついております故、排除しないといけません』
異次元から這い出てきたダアトが、こちらへと向くと鋭い目を細める。
見つめていたのは、空間にある俺の影だ。
『これが噂に聞いていた11番! 竜喰らいの竜か!
フハハハ! 面白い、面白いぞ!』
狙われた当人は楽しそうに声を上げる。
「いまはそんな場合じゃない!
ダアト、この空間を、竜の心臓を喰らってくれ!」
身体の変色は止まったわけじゃない。意識は朦朧とし始めている。
『我輩の主殿を喰らおうとはなかなかに無知なり愚かな未成熟の竜め。
しかしてここが中だというならば、まずは破壊をするしかありません』
「なんでもいい!」
『では』
急かすと、ダアトが白い翼を大きく広げて上空を見遣る。
そして、口を大きく開くと、そこから赤い光線を放った。
光線は先の見えないと思っていた上空に衝突し、空間を砕く。
そこには異次元召喚の時に現れるような黒い空間が作られた。
『あそこから抜けましょう』
「よし、全員持ち上げて飛んでくれ!」
俺はすぐさまダアトの背中に跨る。
『そちらの家畜は』
「全部だ!」
動きの遅いダアトのペタペタとした皮膚を叩いて無駄口を黙らせる。
すぐに浮遊感に襲われ、砕かれた場所へと近づき通過した――。
***
ゴウッと大きな風が通り過ぎるような音に鼓膜を覆われる。
閉じてしまっていた目を開くと、そこは廊下からの光が入り込んだ実験部屋だった。
床にはマティヴァさんとインギーが転がっている。全員肌の色も戻っていた。
「KRRRRRR!!!」
同時に、木楽器のような声が脳を突き刺す。
後ろを見れば、ダアトが最初の時の一つ目の姿に戻っていた。
まさか、あの場所から出るのに取り込んだベリルの力をすべて使ったというのか。
どうしてそういうリスクは確認しておかない!
オウカも、お前も、事前に俺に言っておけよ!
「なんと! なんとなんと素晴らしいことでしょう!」
さらに声。視界を正面に戻すと、アンセロが歓喜に身を震わせていた。
「まさか竜の召喚を止めて戻ってくるとは!
これは予想外でした! 人類も何をしでかすかわかったものじゃないですね!」
「アンセロ、お前最初からドラゴンの召喚が目的だったのか」
「当たり前じゃないですか。
竜は魔族に従ずる最強の魔物です。そんな存在を石にしておくほうがおかしい。
しかしまあなんということでしょう!
あなたにも立派な竜がいるじゃないですか! しかも見たこともない竜!
おかしい! 最初の塔から生まれた竜が十体のはず」
アンセロがたらたらと何かを叫ぶ。
「ですが」と、こちらをみて唇に舌を這わせた。
「あなたも私の支配下に置いてしまえば、どうでもいいことですね」
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