第149話 二つの魔法
――魔法。
ステータス上にあるMPを消費することで行使することの出来る能力。
この世界には二種類の魔法がある。
ひとつはスキル。
誰もが会得できる可能性のある魔法。
一般的なものはこのリストに表示される。
もうひとつはアビリティ。
特定の種族や個人しか会得することの出来ないオンリーワンを秘めた魔法。
俺を含めクラスメイトがこの世界に転移した際、アビリティに異言語力と異界の眼を与えられた。
推測だが、これらのアビリティは「異世界転移者のみ」が与えられるものなのだろう。
「ツムギ殿も魔法の説明は、ダーヴィーダート兄弟から聞いておられよう」
「まあ……」
確かに、俺をハメたあいつらから大雑把な説明は受けている。
というか、あの眼鏡たち兄弟だったのか。
それはともかく、目の前ではクラスメイトが次々と魔法を行使している。
使っているのはスキル――のはずだが。
「生命を灯し、焦がし、
男子が叫ぶと、頭上に巨大な火球が生まれた。
頭三つ分の大きさはあるだろうか。随分と強力そうなものを作り上げるものだ。
「あれは上級ですか?」
「いや、初級ですな」
あのサイズで初級……?
俺の知ってる火魔法と違う。
「階級に関わらず、魔法の威力は消費するMPでも変わりますからな。
特にキズナリストで強化された候補殿たちなら、初級でもCランクモンスターくらい容易く屠れるでしょう」
単純に燃料の差なのか。
以前見たヒヨリのMPが7000近くあったか。
今の俺は――
◆ツムギ ♂
種族 :人間
ジョブ:魔法師
レベル:49
HP :470/470
MP :470/470
攻撃力:490
防御力:520
敏捷性:480
運命力:49
アビリティ:異言語力・異界の眼・絆喰らい
スキル:上級火魔法・上級水魔法・上級風魔法・上級土魔法
あ? でもなんかすごい上がってる。
どころか、スキルまで上級で揃ってるし、何よりジョブまでついてる。
え、え、なにこれすごくない?
つまり、俺は地下でモンスターと戦ったのか?
記憶が無いから……気絶したまま?
それともドラゴンが食べたオプスゴブリンが経験値として加えられた、とか。
俺の目の前でやられたんだし、その方が納得できる。
レベル30程度のモンスターで、相当経験値が稼げるのかもしれない。
となると、ダンジョンに潜ったみんなは相当レベルがあがってそう。すごくない気がしてきた。
「ツムギ殿も模擬戦をしてみてはいかがかな?」
「え、俺が?」
「いいじゃないか紡車、今の君の実力をぜひ見てみたい
なんなら僕が相手しよう」
光本が俺に期待の言葉を投げかけて中庭へと進んでいく。
「ツムギくん、大丈夫?」
「まあ、模擬戦だしな」
というわけで、光本と向かいある。
クラスメイト達が練習を止めて、周りに集まってきた。
聞こえてくるのは「キャー光本くん頑張ってー!」だけである。せめて男子は俺を応援してくれても「
「どうする? 魔法を使うかい?
紡車はゴブリンを何で倒したんだい?」
「残念だが短剣でな。落ちていなかったか?」
「僕は見かけなかったな……それじゃあ――どっちも使ってみようか!」
光本が腰に掛けていたホルダーからナイフを取り出すと同時に、俺へと迫ってくる。
あれ? 模擬戦なのに殺意がうっすらと伺えるんですが?
俺は慌てて後ろへと下がる――鼻先数ミリのところをナイフが過ぎ去った。
「大丈夫だよ。紡車の動きは――読めている!」
光本が手首を翻して叩き落としてきた。
ゴッ、と鈍い音が頭に打ち付けられる。
ハンドルのケツで殴りやがったなこいつ!?
咄嗟に出た両腕で地面とタッチし、バネのように横へと身体を跳ねさせる。
あのまま地面に倒れたら追い打ちを喰らいかねない。
「紡車……意外に動けるんだね」
「散々基礎訓練を受けたからな」
立ち上がる俺に対し、光本は余裕を持った声音で話しかけてくる。
「僕たちは一通りの基礎を学んだあとは、すぐにモンスターを倒したり魔法に打ち込んでいたからね。
格闘戦だったら負るかもしれない」
「じゃあ、異世界らしく戦おうってことか?」
「そうだね……君なら意外性を見せてくれるんじゃないか?」
光本の頭上が明るくなる。
「おいおい、待ってくれよ……模擬戦だろ?」
半分が水、半分が火で出来た球体。
いきなり出てきた……ってことは無詠唱であんなの出したって言うのかよ。
「もちろん、手加減はしているつもりだよ。
だけど紡車も本気でこないと、怪我をするかもしれない」
光本が「発射」と言わんばかりに腕を前に突き出すと、それに従って球体が俺に向かってきた。
いや……これはさすがに無理でしょ。
魔法には魔法で対抗するしかない。
アビリティはわけのわからないものだから選択肢から外して。
火と水……同時にどう対処すればいいんだ?
そっか、双方向から逆のぶつければいいのか。
俺は左右へ腕を伸ばして両手を開く。
詠唱は――知らない、特段浮かんでこない。
「スキル――火魔法
スキル――水魔法!」
声を上げると、見事両手の中に火球と水球が現れた。
――本当に見事なまでの、手の平サイズで。
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