第三章 青き瞳を奇跡と呼んだ

異次元召喚(ハーニガルバット王城)

第140話 王都

 天気は晴れ。

 南の街とは違い、北にあるここはいくらか涼しさがあった。


「弓聖様、どうぞお通り下さい」

「おう」


 守衛の敬礼に対し、慣れたような返事をするおじさん。

 特に気にした様子もなく挨拶程度に頭を下げたのが、白いワンピース姿のマティヴァさん。

 その光景にぽかんと口を開いてたのはシオンとオウカである。


「あのおじさん本当にすごかったのね」

「シオンちゃんそりゃねえぜ……」


 がっくりと肩を落としたおじさんは、そのまま握っていた轡を引いて馬車を動かした。


「さ、ここからが王都だ。

 オウカちゃんは初めだな?」

「はい――わぁ!」


 門を潜ると、そこには溢れんばかりの人で賑わっていた。


「ようこそ、ハーニガルバット王都へ!」


 門付近では演奏家たちが楽器を鳴らしている。


「人がいっぱい……すごいですツムギ様」

「そうだなあ。相変わらず多いなあ」


 俺は人の多い場所は苦手だ。


「俺としちゃあ、精霊様のほうがすごかったけどな。

 あんな便利な魔法があるんだなあ」


 おじさんが言っているのは無足歩行アプスウィープのことだ。


「一瞬で王都の前まで来ちまうんだもんな。

 配達の仕事もなくなっちまうぜ」

「精霊のアビリティを使える人類なんかいないだろ」


 俺を除いて。てか今回の発動は俺だし。

 リーには隣で発動してるフリをしてもらった。俺が使えるということを知られるとややこしくなるし。

 今は街と契約をし直してお留守番である。


「まずはシオンちゃんとオウカちゃんを学院に下ろすか」

「え、ツムギは?」

「おじさんたちと一緒に報告だ」

「私もツムギ様についていきます!」

「オウカちゃん悪いな。王城は一般奴隷は入れないんだ」


 おじさんの言葉にしょんぼりと顔を俯かせるオウカ。


「一般じゃない奴隷ってなんだ?」

「貴族についた奴隷とか、王国で買った奴隷とかだな」

「王国が奴隷を買うのか」

「そんな意外な話でもないぞ?

 理由は色々あるが、法で奴隷を認めてる以上、国が権利を行使しない理由はないわな」


 言われてみればごもっともである。


「えー! あたしだってお城に入りたいー!

 お姫様を間近で見てみたいー!」


 子供のように馬車の中で足をジタバタさせ始めるシオン。


「わ、私も! 私も行きたいですー!

 お姫様みたいですー!」


 オウカまで駄々をこね始める。教育によくない。

 と、一つ思い浮かぶ。


「おじさんが有名人なら、子供の一人や二人連れてきても許されるんじゃないか?」

「俺? いや、できるかもしれないが……」

「「おーじーさーん」」

「オジサーン」

「最後にぼっちのがなければ折れてたなあ」


 シオンに頬を抓られたのでなかったことにしてもらった。

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