第343話 もう片方
「まずこの場を離れる!」
「シオンお姉様は」
「悪いが寝かせておけ!」
これだけ生徒と冒険者が倒れている場所で戦闘になればこちらが不利だ。
アンセロの行動といい、ラベイカのクラスメイトの傷つけ方といい、魔族が勇者候補を殺さないようにしているのは確実だ。
しかし他の奴らは違う。
レイミアみたいに――。
「とにかく、他の奴らは邪魔になる。ダアトたちと合流する」
三人で走り出して廊下を抜ける。
向かう先は校庭。
オウカも見つけたので別れていた面子と合流してこちらの戦力を整えた方がいい。
「ツムギ、ダメです間に合いません」
階段を完全に下ったところで、真後ろにあった階段が消滅した。
「あら、気付かれましたの」
「白髪のゴスロリ……」
そんな見た目の奴は一人しか見覚えがない。
消えた階段の先にいたのは双子のもう片方――クラヴィア。
「お姉様は完全消滅ですわね。
ワタクシの持っていた肉体の一部からも再生できないなんて」
「邪魔だったんでな」
互いの持っている肉体から再生できるのか。見落としていた。
だが今回は精霊魔法によって完全消滅させたおかげか再生はないらしい。
「もうお前も再生出来ないんじゃないのか?」
「そうですわね。
ですが、それなら攻撃を受けなければいいだけのこと」
「
リーがすぐに攻撃を仕掛ける。
しかし、こいつはラベイカとはまた違うアビリティの持ち主だ。
「全て無効ですわ。
アビリティ――
クラヴィアの頭上から迫る半透明の腕が消失する。
「魔法じゃあいつへの攻撃はほぼ通らないし、近づいてもラベイカ同様蛇腹剣を隠し持ってる」
「魔法が効かないのであれば近接戦闘に持ち込むしかありません」
「私が行きます」
動いたのはオウカだ。
「あら、おそろいの髪色ですわね」
クラヴィアはオウカ姿を見てくだらない感想を呟くだけで、動く気配はない。
二尾のオウカが手を床につけた瞬間その姿が消える。
「はあっ!」
「ふふ」
一瞬にして詰め寄ったオウカがダガーを振り下ろすが、クラヴィアからは笑みが返ってきた。
「っ!?」
ダガーがクラヴィアの身体をすり抜ける。
幻影? そんな能力持ってなかったはずだ。
オールゼロが作り出したから実体がない、としたら他の奴らも同様になるはず。
ならば残させれた可能性は、
「自分を欺いたのか」
「ご明察ですわあ」
青い唇は相手に思い込ませることで、口にしたことを現実にするアビリティ。
ならば話は簡単だ。
「自分には一切の攻撃が通らないと自身を騙しこめばいい」
「思い込みって案外大事ですのよ?」
わかっててできるってのが質が悪い。
「なら――ッ!」
数歩後退したオウカが目を見開く。
その身体に青い気を纏始めた。
「もう一本」
尾が三つになる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます