第232話 マスグレイブ
第一の竜、エレミア・ジェバイド・ドラゴン
第二の竜、ベリル・ビクスバイト・ドラゴン
第三の竜、マスグレイブ・ターフェアイト・ドラゴン←NEW
なんて、危険な状況の時ほど脳内は変な言葉を思い浮かべてしまう。
「ふははは! 怯えろ人類!
我輩こそ最強なる竜族であるぞ!」
背後からの殺気に剣を構え、同時に火花が散る。
俺がギリギリの所で受けている、わけじゃない。
これはもう一方的に遊ばれているだけだ。
「さあどうするか!
貴様の力を見せてみろ!」
「地魔法!」
地面に魔法を加え、土埃を舞わせる。
マスグレイブが透明になっているだけなら、本体は実在しているのだから土埃のない場所が……現れない。
「おしいなあ人類!」
「ぐっ!?」
背中に衝撃と激痛が奔る。
引掻かれたか!
「ならこれで!」
俺はすぐに態勢を立て直す。アイテムボックスから光明石をあるだけ取り出して魔力を流し込み、四方へ投げ飛ばした。
煌々と輝く石がダンジョンを明るくして暗闇を遠ざける。
「本体が透明でないなら、お前は影に隠れているというわけだ」
「ご明察! 判断力行動力の素早さ実に素晴らしい!
我輩は貴様を気に入ったぞ!」
声は真後ろから。
いや、相手が影に潜んでいるのなら俺の位置まで来れないはず。
――影はあった。俺の影が戻っている。
それが歪に蠢いた瞬間、首元に爪が当てられていた。
「貴様の負けだ」
いやだ、死にたくない。
俺は生きるんだ。
「絆喰らい!」
影がもうひとつ現れ、大きな口を開ける。
「ほう! それが!」
「俺ごと喰らえ!」
叫ぶと同時に視界が闇に包まれ、すぐに元へと戻る。
明るくなったダンジョンに俺の影が一つだけ。
しばらく沈黙が続き、やがて息を呑んでから呼吸を再び始める。
首元にケガはない。ステータスを開くが、スキルやリストに変化は見られない。
逃げられたか。
姿も形もなく、相手の影を喰らって奪うドラゴン。
非常にややこしい敵が出てきてしまった。
これ以上ここにいるのはまずいか。
俺は近くに落ちている光明石を拾えるだけ拾ってから、安全エリアへと戻った。
その日の夜はマティヴァさんの寝ている横でひたすら見張りをしていた。
ここが安全エリアといっても、あのドラゴンが襲ってこない保証はない。
何にだって例外というものはあるし、そもそも安全エリアの保証だって誰かがしてくれるものではないのだ。
ダンジョン内なので、細かな時間は把握できないが、3,4時間といったところでマティヴァさんが目を覚まし、寝ぼけた様子で手を動かす。
いや、あれは交信をするときの動きだ。何か連絡があったらしい。
「うん、うん……そっかあ。
うん、じゃあすぐ戻るね」
「シーファさんからですか?」
「うん、インギー卿が諦めて帰ったから戻ってきても大丈夫だって……って、ツムギちゃん、顔が怖いよ? 大丈夫?」
「すみません、元からこういう顔です」
「冗談言えたんだね」
「ともかく、戻っていいなら戻りましょう。こんな場所に長居する必要はないです」
ドラゴンが出た、などと余計なことを教える必要はないので、適当に誤魔化す。
しかし危険なのは変わりないので、すぐに戻ったほうがいいと判断し、俺は
二人で通過して部屋へと入ると、そこには膝をついたシーファさん。
「ぶっひひひ! お早いお帰りだなマティヴァ!」
そして、シーファさんの肩に足を乗せて椅子に座った豚がいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます