第40話 陽の休刻

「それじゃあ、昇格試験の説明をするねえ」


 お腹がいっぱいになったところで、改めて受付の前に集まった。


「シオンも聞くのか?」


 隣のシオンに問いかけると、彼女は鼻をふんと鳴らす。


「あたしだって暇じゃないのよ? だけど、今日の予定は陽の休刻からだから、それまでは暇つぶしに付き合ってあげるわ」


 陽の休刻は午後三時くらい。

 暇なんじゃねえかと突っ込もうとした時、


 ゴーン、と街の鐘が鳴った。陽の休刻を告げる鐘である。


「ああああ戻らないと! 覚えてなさいよツムギ! またねオウカちゃん」


 慌てた様子でシオンは帰っていった。商売に励んでくれ。


***


 さてさて改めて、


「……なんか、人が増えてません?」


 俺とオウカとマティヴァさんに、知らない冒険者が二名。

 片方は、全身が銀のプレートアーマーで、兜だけを外した短い茶髪の少年。

 もう一方は、紫のワンピースに、先端が曲がった魔女帽子を被った長い金髪の少女。大事そうに筆状の長箒を抱えている。

 

「この二人も一緒に試験を受けるのよ」

「初めまして! センと言います!」

「ナナです。よろしくお願いしますね」

「あ、ども」

「奴隷のオウカです。よろしくお願いします」


 センの黒い瞳とナナの灰色の瞳がキラキラと輝いている。いらっしゃる。

 初々しさに気圧されて俺は小さな声で返してしまった。オウカは元気がいい。お腹が満たされたおかげか。


◆セン ♂

 種族 :人間

 ジョブ:なし

 レベル:28

 HP :501/501

 MP :81/81

 攻撃力:361

 防御力:501

 敏捷性:361

 運命力:36


 アビリティ:七閃-電-


 キズナリスト:ナナ


◆ナナ ♀

 種族 :人間

 ジョブ:なし

 レベル:27

 HP :438/438

 MP :382/382

 攻撃力:382

 防御力:438

 敏捷性:382

 運命力:38


 アビリティ:七閃-雷-

 スキル:初級雷魔法・初級風魔法


 キズナリスト:セン


 互いに切磋琢磨し、順当に成長を重ねてきたのだろう。表情はどこか自身満ち溢れている。

 そしてあのアビリティ。なかなかお目にかかれない代物だ。

 対してセンの目はオウカにかかりっきりである。認識阻害の頭巾を被ってるのに……。


「ど、奴隷……」


 センの唾を飲む音が聞こえた。思春期かよ。

 すぐにナナから「めっ」と頬を引っ張られている。リア充かよ。


「今回はこの二組で受けてもらうの」

「具体的には?」

「同じ目的のクエストを受注してもらうよ。だけど達成できるのは一組だけ」


 マティヴァさんの説明に、四人で首を傾げる。

 ギルマスが死ぬだけだとか言い出すから、殺し合いとか過激なものを想像していたのだが……。

 まったく関係のない別の二人も受ける以上、変なクエストではないだろう。

 なのに、片方しかクリアできないというのは……と、考えても無意味か。

 マティヴァさんがすぐに答えを言ってくれる。


「あなたたちに受けてもらうクエストは――人探しです」

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