第41話 達成条件
「人探し……ですか?」
ナナが訝しげな表情を浮かべる。俺と似たような考えを持っていたのだろう。
「ちょっと急ぎのクエストなんだけどねえ」
マティヴァさんが、似顔絵の書かれた一枚の紙をテーブルの上に置く。
茶色い髭をボーボーに生やした、目の細い男が描かれていた。
「三日前、ネイクラさんって名前の自称ネクロマンサーが、ダンジョン探しに向かったの」
「自称って……」
「詳しくは知らないんだけど、彼の持っている武器が死者を操る剣らしいのよ」
「それはまた珍しい。その方が戻ってこられないんですか?」
「そうなの。たぶん東の森に向かったと思うから、死体を探してきてほしいの」
死体を探しにって、死んでること確定なのかよ。
でも三日も戻ってこないなら、野垂れ死んでいる可能性の方が高いか。
「つまり、俺たちはネイクラさんを探す。先に彼を見つけたほうが昇格できるってことですか」
「そういうこと。死体があればギルドカードを、死体が見当たらなくても、彼の装備品なんかがあればそれでもいいわ」
なるほど。片方の組だけが昇格できるってのは、クエスト対象が一人しかいないからだったのか。
◆クエスト(昇格試験)◆
冒険者ネイクラの捜索
達成条件:ネイクラのギルドカード、もしくはネイクラの装備品いずれかの回収。
※ただし、ギルドへの持ち込みが早かった冒険者グループのみ適用。
達成報酬:Dランクへの昇格
依頼主:冒険者ギルド ソリー支部
以上。
「あの……質問いいですか?」
センが小さく手を上げた。
「その人が戻ってこないのって、ダンジョンの中を探索しているからではないのですか?」
「その可能性は低いわね」
センの疑問をマティヴァさんが否定する。
「センちゃんはダンジョンの基本を知ってる?」
「えーと、いつの間にか自然発生している、モンスターの巣窟とだけは……」
「そうね。ただ、その発生の仕方には二つのパターンがあるわ」
マティヴァさんが、人差し指と中指を立てる。
「一つは
「それって、王国の近くにあるやつですか?」
「そうよ。王国騎士団が定期的に遠征する場所がこのタイプね」
クラスメイトが遠征しに行った場所である。ただし、正確に言えばあのダンジョンは層楼型に見える特殊なタイプだ。
というのも、これからマティヴァさんが口にするもう一つとの混合型だからである。
「もう一つは地下型。地下に伸びていくタイプで、層楼よりややこしいの」
「ややこしいとは?」
「地下に伸びているせいで、層楼と違って見つけにくいの」
「なるほど……この辺りには高い塔がないから、ネイクラさんが探しに行ったのは地下型なんですね」
「そういうことよ。それで、地下型は目立たないから、発見次第まずギルドに連絡することになってるの」
「その連絡が来ていないということですか」
地下型の入り口は、洞窟のようになっているものもあれば、地面に穴が開いているだけということもある。それ故に発見が難しい。
地中にできた楼閣とかで別名、
どっかのオヤジがニヤつきながら考えたんだろうな。
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