戦いの敗者は(王都学院)
第356話 三大魔法
一斉に動き出す。
「ツムギさん、作戦は」
「ない!」
未知の相手に作戦があるなら教えて欲しいくらいだ。
まずは攻める。
オールゼロは動く気がない。代わりに魔法を放ってくるのは必至。
「魔法に注意して詰めるぞ」
「分かりました!」
オウカが最初に近距離まで詰める。
邪視を使っている今ならそのスピードは目で追うのも難しいレベルだ。
「
オールゼロが口にすると同時に、オウカが飛び跳ねるように後ろへと後退する。
突っ込もうとしていた場所に炎の壁が生まれた。
オウカの速さですら、どこに来るか予測して魔法を放つか。
「水魔法!」
俺が水球を十何発か放って炎を消す。
こちらは近寄らない限り攻撃を与えることはできない。
「ツムギさん!」
横からクラビーの叫び声。
一瞬視線を移すと、クラビーがこっちに向かってきていた。
いや、完全に攻撃態勢だ。
「避けて!」
「なんッ!?」
身体を捻り空中回転してクラビーの拳をスレスレで避ける。
こんな場面でクラビーのポンコツが発動するとは思えん。
「身体が勝手に」
「だろうな」
クラビーがこちらに向かってさらに拳を振るってくる。
「ツムギ様!」
「俺はいい!
ダアトと一緒にオールゼロを!」
「はい!」
オウカがこちらに来ようとするのを止める。
どうせクラビーが俺に攻撃してくる原因はあいつだ。
「精神魔法
精神ではなく、肉体の神経を操る。」
「趣味の悪いッ!」
俺はクラビーの拳を避けてそのまま腕を掴むと、全身を使ってクラビーの身体を後方へと投げ飛ばした。
「ぬにゃあああ!?」
「暴れるようなら誰か抑えとけ!」
肉体操作を受けたクラビーをひとまず戦線離脱させる。
『我輩が終わらせる!』
その間にダアトがオールゼロへと突っ込む。
オールゼロが再び炎壁を放つが、別次元から召喚されたダアトには効果がない。
炎を突っ切ってオールゼロを捉えた。
「なるほど、次元召喚の類から来た竜か。
噂に聞いた十一番目だな」
ならば、とオールゼロが右手を伸ばす。
「あるべき場所に帰せよ。
空間魔法――
オールゼロの目前まで迫ったダアトが、しかし奴の手の前に現れた魔法陣に飲まれて消えた。
「なん、だと」
「本来の次元に隔離する魔法だ。
君たちに使えないのが残念だがね」
ドラゴンが全滅。
魔物の頂点ではあるが魔族の下だと何度も口にされてるのを聞いてきたが。なるほど、相手はダアトも含めてドラゴンの対策を持っていたというわけだ。
「なんで、お前がそんな魔法」
「なぜ使えるかと?
三大魔法師貴族である、ケリュネイア家、レルネー家、ネメア家。
彼らに魔法を教えたのは我だよ」
「死にぞこないめ」
つまりは、今この世界を動かす三大魔法を持っているというわけだ。
どこまでこいつはチートなんだ。
こんなんで人類が勝てるわけがない。
「だが!」
オウカに続いてオールゼロとの距離を詰める。
水魔法を放ち炎の壁を消す。
その先に見えた魔族は、左手をどこかへ伸ばしていた。
腕の半分が空間の歪みの中へ消えている。
「ツムギ様!」
オウカがこちらを見る。
――まさか。
1回目の炎壁は単純な壁として。
そして2回目は視覚情報を遮断するために。こちらに悟られないためにわざと同じ魔法を発動しやがったな。
そう気づいた時には、俺の横に黒い手が見えた。
「空間魔法――
「ッ」
避けるも遅く虚しく。
俺の右半分が抉られた。
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