第13話 オウカ

◆オウカ ♀

 種族 :妖狐

 ジョブ:奴隷

 レベル:8


 改めてオウカのステータスを覗くと、ちゃんと名前がついていた。


「ええええええ!? なんでええええ!?」


 当の本人は、鏡で己の瞳を見つめていた。


「青い瞳は邪視の証だから、目を隠すようにって……」

「記憶がないのに誰に聞いたんだ」

「これは一般常識ですよ!」


 自分のことだけ記憶にないらしい。


「いつ自分の目が青色だって言われたんだ?」

「それは……あれ、いつだろ?」

「……オウカ、お前もしかして、騙されて奴隷に落とされたんじゃ?」

「……そんな、そんなわけ」


 オウカの口角がぴくぴくと震える。


「記憶もなし、何をしたかも覚えておらず、青い瞳だと植え付けられて……可哀想に」

「そんな憐れんだ目で見ないでくださいよご主人様!」

「そっかそっか、それじゃあ早めに奴隷解放してやらないとな」


 そういってアイテムボックスを開く。

 アイテムボックスはステータスと同じように念じることで現れる異空間だ。

 ゲームっぽい機能だが、これは神が与えたものではなく、ギルドの創設者たちが作り上げた技術らしい。ギルドカードを持つ者のみが使える魔法みたいなものだ。

 そこから銀貨を取り出す。


「これが、お前自身を買い戻すお金だ」

「銀貨……30枚!?」

「いい買い物だった」


 小さな手に収まりきる銀貨を眺めて、オウカがわなわなと震える。

 犯罪によって奴隷にされた者が解放されるには、一定の奴隷期間を経過したのち、買われたときの金額を国に納める必要がある。


「事実かどうかは別として、オウカは窃盗で奴隷落ちした。窃盗での奴隷期間は1年ほどだ。真実かどうかは別として」

「騙された子を強調しないでください!」

「逆に、主は奴隷の税を納めなければいけない。1年目の税金は購入時点で納めることが確定している」

「つまり……つまりどうなるんですか?」

「税金分は働いてもらう。だが、その銀貨30枚はオウカにあげよう。お前自身だと思えばいい」

「この……このたった30枚の銀貨が私……」

「どう使うかは自由だ。1年後まで取っておいてもいいだろう」

「それって……」


 簡単な話だ。


「1年後に奴隷をやめられるかどうかは、オウカ次第だ」

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