第43話 腐敗臭
「層楼型のダンジョンはすぐに見つかるから報告報酬が設けられていない。
対して、地下型は見つけにくいがために、報告すれば報酬はけっこうなもんだ」
「それなら、当てがあっても隠したくなりますね」
「冒険者は情報をできるだけ隠す。ギルドは見つかった後に報告してくれればそれでいい。
ネイクラさんはきっと、探索に行くことだけを伝えて、具体的な場所を言っていなかったんだ。誰に聞き耳をたてられているかわからないからな」
「それがマティヴァさんの情報が曖昧だった理由ですか」
「簡単に言えばな」
オウカが「ご主人様すごいです!」と、耳をパタパタと動かす。
よせやい褒めるなよ。これ新人冒険者以外なら本当に誰でも知ってることだから。
「でも、それだと西の森へ入った理由にはなりませんよね?」
「よく気づいた、偉いぞ」
オウカの頭を撫でる。お風呂に入ったおかげかふわっふわの髪と耳です。
「ここからは推測だ」
と話の途中だが、一つの目的地にたどり着いた。
「あれ? ここって」
「昨日見た場所だな」
着いたのは、昨夜オウカがスライム狩りをした大穴である。
「ここら辺は近づくなと言われてたから、モンスターが溢れてたな」
「はい……」
オウカのテンションがあからさまに落ちた。
まあ、スライムのトラウマがある場所なんて何度も来たくないわな。俺だって王城の地下はもう御免だ。
「スライムを作っていたのはクイーンだった。それじゃあ、クイーンはどこから来たんだ?」
「どこから……? モンスターが生まれる場所――ダンジョンですか!?」
「大正解。モンスターはダンジョンからしか生まれない。外で見かけるのはダンジョンから出てきた奴だ」
オウカ頭をわしゃわしゃ。どんどん正解してもらいたい。何かと理由をつけて頭を撫でたい。
「あれ? でもご主人様はスライムがたくさんいること知ってましたよね?」
「ここらへんでスライムが増えていることは知っていた。あとは、あれだ……俺もダンジョンを狙ってたんだ」
「なるほど……って、ネイクラさんに先越されちゃってるじゃないですか!」
「他に気づいてるやつがいるとは思わなんだ」
ともかく、大穴を避けてさらに奥へ進む。
日はすっかり落ちて、辺りは暗闇に染まっていた。
今回はクイーンのいた洞窟がある方向とは別を歩いてみる。あの洞窟には何もなかったからな。
「スライムの数やクイーンの強さから、ここらへんにダンジョンがあるのは確かだろう。だからここら辺を重点的に探せばネイクラさんも――」
「ご主人様」
オウカが脚を止めて、鼻をぴくぴくと動かす。
「何か、腐敗臭がします……」
「……案内してくれ」
アイテムボックスからカンテラを取り出して明かりを灯す。
茂みに入ったところで、腐敗臭の原因を見つけた。
――そこにあったのは、首のない死体だった。
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