第257話 ◆

「神……ミトラスのことか?」


 この世界で神と呼ばれるのは盟友の神ミトラスだ。

 キズナリストを作り出し、人類に力を与えてくれたという。

 俺も転移の際、名乗られはしなかったもののミトラスらしき神と邂逅している。


「笑止。それは人類の作り上げた神だろ?」


 しかしマスグレイブは首を横に振る。

 確かに魔物や魔族からすればミトラスの行為は自分たちの存在を脅かすものだ。それを神と呼ぶのは躊躇われるだろう。


「なら、お前の言う神というのは」

「神に名はない。この世界を動かす存在、それだけで十分なのだ」


 ならば、俺がこの世界で邂逅した神はミトラスでなかった可能性もあるということか。


「で、その神に触れる権利というのは?」

「詳しいことは分からぬ。古くから言われているだけだ。

 しかし、捕食者の力は他とは一線を画している。

 それは己が使っていればわかることだろう?」


 いままでモンスターや魔族と戦闘をする中で、勝敗の決め手となっているのが絆喰らいだ。

 この力は通常のスキルもアビリティをも超えていることは自覚している。

 故に代償があると、心も喰われていると考えているのだが。


 キズナリストに干渉するアビリティ。それ以上の能力も出てきた。

 それでどう神に触れる……?

 

「……まてよ」


 ふと、思いつく。

 同時に、


「縺翫↓繧??縺薙♀縺ォ繧??縺灘眠繧峨o縺帙m縺舌∈縺ク縺ク縺ク?」


 何かの声がダンジョン内部の響き渡った。


「モンスターか!?」


 俺はすぐに駆け出す。

 マスグレイブは「ククク」と笑い声だけを残して影の中に潜った。


 マスグレイブと話がしたいから、人のいなそうで且つ最悪戦闘になってもいい場所を選んだ。

 逆に、モンスターと遭遇すれば危険が一気に増す。ステータスの上がっていない俺は余計に。


「リー呼ぶか! いや先に敵を確認すべき!」


 非常に危険な相手なら絆喰らいを使ってでもリーを呼ぶべきだろう。

 しかし、この階層がそこまで深くなく、敵が俺でも対処出来るなら、使わない方がいい。


「どこだ!?」


 異界の眼を全力で発動して周囲を警戒する。

 どこからでてこようと敵がいればステータスが表示される。


 だが、俺の瞳に写し出されたのは。



「名前がない!?」


 想定外の自体に頭が混乱する。

 普通のモンスターならステータスが表示される。

 リーやダアトはステータスは表示されなくとも、名前だけは表示されていた。


 そのどちらでもないならば。

 答えは一つだ。


「みんな、ほかの冒険者が……えっ!?」


 遠くから女の声が聞こえてきた。たぶん俺のステータスが見えなかったはずだ。


 俺は知っている。

 相手も知っている。


 学院の制服を来た男女が、上空から俺の目の前に現れた。


 互いにステータスが見えない相手、それは同じ勇者候補だけだ。


「ツムギくん!?」

「ヒヨリ……!」

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