第351話 縛鳴
眼前でリーの身体が粒子となって散る。
「リーさん!」
「オウカ! 攻めるぞ!」
リーの敗北に目を見開くオウカへ指示を出す。
オールゼロは本当に魔族を倒しきるまで動く気がないと判断した。
ならば、俺とオウカも動くべきだ。
「クラビー、動かないと死ぬぞ!」
「っ!?」
動けなくなっていたクラビーに向かって白の騎士が迫っていく。
「させるかッ!」
騎士の足元を土魔法で床ごと隆起させる。
バランスを崩した騎士を体当たりで吹き飛ばす。
「ツムギさん、クラビーは……」
「安心しろ、リーはまだ死んでない」
ステータスにはまだリーが載っている。ということは彼女はまだ消滅していないということだ。
なら考えられるのは、攻撃を受けた際に自身を分解して、現在は再構築を始めていると言ったところだろう。
「だから」
俺の予測通り、目の前に黒騎士が改めて現れる。
再構築中に発動する防衛機能だ。
「やはりあの精霊の魔法は面倒ですね。
自身を何度も作り直せる、だからここまで意味もなく生きてきた」
「意味を決めるのはお前じゃねえよ、ゾ・ルー」
「ん~神に触れる者は言うことが違いますねえ。
で、す、が」
今度はゾ・ルーが動き出す。
「あなたは殺していいことになっている!」
「かかってこいよ!」
リー復活までの時間が稼げるなら俺が的で問題ない。
「精霊魔法――
俺を取り囲む様に魔法陣が現れ、そこから鉛色の鎖が飛びかかってくる。
さすがに捕まるのはまずい。
俺は迫り来る鎖を短剣で跳ね除けつつ、全身を飛び跳ねさせて避ける。
しかし、一本足りない。
足元に鎖が絡みつく。
「ぬぉ!?」
またこのパターンかよ!
絡まった鎖に振り回され、そのまま遠心力を使っての大回転を受る。
迫る地面。
「ツムギ様!」
しかし直前でオウカが魔剣を振り鎖を断ち切ったことで、ギリギリ俺も受け身で地面を転がる。
「ああああああ! 妖狐!
忌まわしく耳障りな!」
ゾ・ルーが今までにないくらい感情的な声で叫ぶ。
喉の皮膚を張り、口をへの字に曲げて嫌そうな顔を浮かべた。
「清く正しく美しい世界だったのに!
オールゼロ様が作り上げたあるべき世界だったのに!
妖狐族なんかが生まれるからどんどんどんどんどんどんどんどんんんん―――――汚く、なる!」
再び魔法陣が現れると、今後はオウカに向かって飛んでいく。
しかオウカはそれを読み切り、すべてを魔剣で切り落とした。
「一つ聞かせてください」
「妖狐族と交わす言葉などない!」
唐突にオウカが問いかけるが、精霊はそれを無視して両手を天井に向ける。
「
魔法で明るくなっていた空間に、加えて自然の光が入り込む。否、あったはずの天井が忽然と消えた。
上空からオウカ目掛けて半透明の腕が落ちてくる。
あれを喰らえば消失必至。
「避けきれます! だから!」
オウカの尻尾がさらに一つ増えて四尾になる。
すると、オウカの動きが目で追うのも難しいくらい早くなった。
当然、精霊掌など当たるわけもなく、
「いまです!」
オウカの掛け声とともに、俺とクラビーが一気に精霊へと詰めた。
「敵はオウカだけじゃないぜ?」
「ッ!」
俺の一振りをゾ・ルーは後退することで辛うじて避けるが、
「そぉい!」
「おっ!?」
後ろに回っていたクラビーの正拳付きで前へと押しやられ、そして俺の剣が腹部を横切った。
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