二人の精霊(王都学院)
第350話 ゾ・ルー
◆ゾ・ルー
精霊。
契約を媒介としこの地に存在できる種族。
リーが月の名で、目の前の精霊は太陽の名。対照的な二人の存在。
「う~ん、懐かしいですね。
まさか月の名の精霊と再び会えるとは」
「こちらも驚きですよ。
あなたは滅んだはずですが」
「クフフ、今こうしてこの場にいるのが事実ですよ?」
精霊はこの世界の人ですら一生に一度会えるかどうかの遭遇率だ。
逆に言えば個体の少ない精霊だからこそ、同じ種族の存在は認知しやすいだろう。
「あなたこそ、街なんかと契約して眠りについていませんでしたか?」
「一度起きたので、当分眠ることはありません」
古い知人に久々に会った突っつき合うような会話だが、その空気はピリピリとしていて、周りにいる全員が息を呑む。
精霊は何かと契約していなければその存在を維持することはできない。
ならば、目の前の精霊も何かと契約をしているはずだ。
俺は奥の存在に目を向ける。
オールゼロ。
魔族なんてとんでもないもの作るくらいだ。精霊と契約していたって驚きはしない。
「ほら~そこのあなた、余所見はよくないですよ」
声が俺に向けられていた。
と、同時に半透明の腕が迫ってきていた。
「ったく!」
避けるよりも先に、リーが精霊魔法を発動して同じような半透明の腕を発現し、俺に襲いかかる腕とぶつけて相殺する。
それが戦闘開始の合図だとすぐに悟った。
最初に動いたのはリーとクラビーだ。
俺とオウカはオールゼロの方を警戒していた。
二人がゾ・ルーを相手にしてくれている間にオールゼロにも攻撃をしかけたいのだが。
くそっ、隙がない。
あの形の相手ではどこから攻撃がくるかもわからない。オウカと二人で攻めるのはリスクが大きすぎるか。
「てぇいやぁッ!」
思考を巡らせている間にもクラビーがゾ・ルーに詰め寄る。
相手の内側に入り込み、突きを狙った構え。
しかし、
「クフフ」
ゾ・ルーの後ろで何かが蠢いた。
白い甲冑の騎士。
「ダメだクラビー!」
「ッ!?」
騎士がクラビーに向かって白い剣身を振り下ろす。
「
剣がクラビーに触れる寸前で、黒い剣によって弾かれる。
クラビーは「あわわ」と足をばたつかせながら後ろへと下がった。
「あらぁ残念」
「互いの力比べと行きましょうか」
「まあ、精霊の情報は読み取れないけどね」
精霊の背後から現れた白騎士と黒騎士が前に出てぶつかり合う。
黒夢騎士……相手の情報を読み取り騎士の力とする精霊魔法だが。
いまの会話からすると、精霊同士の情報は読み取れない。
ならば騎士の情報源はどこからくるか。
「己が知見と契約による力で差が決まる。
さあ月の精霊よ、眠りの中で何を得たんだい?」
「あなたこそ、死にぞこないのくせに何を持っているんですか」
黒と白の剣が甲高い音を響かせる。
「ああ……吾は持っているよ。
王たり得るオールゼロ様の力をね」
黒の剣が砕け、白い剣は黒の甲冑を抉る。
やはりあいつの契約主はオールゼロか……!
「っちぃ」
リーが舌打ちする間にも、白騎士は黒騎士の甲冑を破壊し、そしてリーへと一気に迫り――その小さな身体を貫いた。
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