第70話 特務
俺とオウカとマティヴァさんの三人で、ギルドの一室に集まる。
「えーっと、これがCランクのギルドカードね?」
マティヴァさんから新しいギルドカードを渡される。
確かに、ランクがCになっていた。
「特務については何も書いてないんですね」
「もちろん、表に出せないランクだからねえ。特務冒険者はぎぃちゃんがちゃんと把握して管理してるよ」
ギルマスってちゃんと仕事してるんだな。
なんとなく強いからまとめ役やってるだけみたいなイメージだった。
「ところで……」
「はい……」
マティヴァさんの視線がオウカへと移る。
隣に座っているオウカは滝のように汗を流していた。
「オウカちゃんって……妖狐だったのね」
「黙っていてすいませんでした」
「謝らなくていいのよ。妖狐が人類に嫌われてるのは知ってるからねぇ。
でもオウカちゃんが悪いことする子には見えないし。瞳だって青くないものねぇ」
「だそうだ」
「えっと……いいん、ですか?」
「いいのよぉ。今まで通り、よろしくねえ、オウカちゃん」
「は、はい!」
オウカの顔に笑顔が戻る。
さすがマティヴァさんの包容力である。
結局、ギルマスとマティヴァさんにはオウカが妖狐であることがばれてしまった。
しかし、口外することはないらしい。この世界での妖狐の扱いは人それぞれなのだろう。
もし過激派がいてオウカを殺すなんてなったら大変だし、黙ってもらえるのはありがたいことだ。
「それじゃあ本題に戻して、一応Cランク冒険者のことと、特務冒険者についても話しておきましょうか」
マティヴァさんがテーブルのお茶を口に運んで、ふぅと息をつく。
「と言っても、Cランクについては特にないわねぇ。Cランクまでのクエストが受注できるようになるわ。下位ランクとの違いは、指定モンスターの討伐や危険地帯の探索が多くて、その範囲がソリーから遠くなることかしらね」
「それじゃあ、いままで通りでいいんですね。問題は特務Aランクです」
「ぎぃちゃんが言っていた通り、特務は秘密裏に行いたいクエストを遂行してもらうわ」
「秘密裏と言うと、どんなものが?」
「そうねぇ。例えば、ツムギちゃんが倒したスカルヘッド・ゴブリンは、あの森でなら特務指定されるわね」
「そうなんですか?」
「ソリーを囲う森は比較的弱小モンスターのダンジョンしかでないの。だからこそ下位冒険者がよく使うわ。そこに人を何人も殺せるゴブリンがいたとすると、速やかにかつ秘密裏に処理しないといけない。そんな強いモンスターが出るなんて噂が広がると、街にも不安を与えちゃうからねぇ」
「なるほど、要は混乱を避けるために無用な情報を表に出さないため、特務で行われるわけですか」
「そういうこと」
そう言ってマティヴァさんはお茶を啜った。
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