第228話 安全エリア

「うん、こっちは大丈夫。

 モンスターも出たけど、ツムギちゃんが倒してくれたから。

 うん、ありがとお。よろしくね」


 交信を終えたマティヴァさんがこちらへと向く。


「シーファの方にはあの人も来てないみたい」

「そうですか。ただ諦めたとは思えないので、まだ探しているでしょう」


 スカルヘッドゴブリンを倒した後も奥へと進み、何度かモンスターに遭遇しながらも下層3階へとたどり着いた。

 現在はモンスターが寄ってこないという安全エリアに篭っている。このエリアだけ土の色が白っぽくなっている。土がモンスターを寄せ付けない何かを持っているのだろう。


 この層のモンスターはレベル30台が主らしく、安全エリアまでに2度遭遇した。


「行けたとしても5階、いや4階か」


 キズナリストも絆喰らいの効果も無い純粋なステータスではここら辺が限界だろう。

 これ以上はリスクの方が大きくなる。

 まだ1匹で出てくるモンスターばかり、これより先は2体3体と同時に出てくることもあり得る。

 そうなればマティヴァさんを危険に晒すだけだ。


「問題はこれが何日続くのか……」

「まだ潜る?」

「いえ、今日はここで休みましょう。

 この先に安全エリアがあるとも限らないので」


 あの男がいつ気づいて潜ってくるかはわからないが、夜までわざわざやってくるとも思えない。

 それに冒険者でないなら道具などの準備だって必要だろう。マティヴァさんも何持っていないが、必要なものは俺が常備していたので問題無い。

 遠出のクエストで使っていた寝袋をアイテムボックスから取り出してマティヴァさんに渡す。


「慣れていないと思うので背中とか痛くなると思いますが」

「大丈夫だよお。ありがと。

 ……ツムギちゃんは?」

「俺は見張りです」


 寝袋に入りながら、マティヴァさんが心配そうな顔で見てくる。


「俺は仕事なので、お気になさらず」

「そっかあ……。

 それじゃあ、私が眠りにつくまで、少しお話しない?」

「……わかりました」


 一応周囲を警戒していたいのだが、寝るまでならすぐ終わるか。


「私がインギーさんに求婚されるようになったのは、もう8年も前かな。

 15歳の時の誕生日に、ある貴族のパーティーにお呼ばれしたの」

「ある年齢になるとそういうのに呼ばれる習慣とかが国にあるんですか?」


 ここでマティヴァさんの年齢が23だと判明した件については突っ込まない。


「そういうのはないよお。

 理由はよくわからないけど、両親に行ってきなさいって……。

 一人じゃ心細いから、幼馴染だったぎぃちゃんと一緒にね。

 そこには私と歳の近い、カイロスさんと、インギーさん。あとはまだ幼かったレイミアちゃんと、エル王女なんかもいたわね」


 どうやらクロノスはいなかったらしい。

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