第207話 絆喰らい‐暴食‐

 絆喰らい‐暴食バアル

 指定範囲のキズナリストを喰らい、そのすべてを自身の力へと集約させる、喰らう側にのみ与えられた世界に干渉する魔法。


 生徒たちのキズナリストを喰らい、集まった数は480。

 そこの竜を屠るには十分すぎるほどのステータスが得られた。


◆ツムギ ♂

 種族 :人間

 ジョブ:魔法師

 レベル:58

 HP :1333230 /1332800

 MP :772360/772360

 攻撃力:1363780

 防御力:1311440

 敏捷性:1311280

 運命力:121836


 アビリティ:異言語力・異界の眼・絆喰らい・精霊言語・精霊魔法

 スキル:上級火魔法・上級水魔法・上級風魔法・上級土魔法


 ‐:ソ・リー


 暴食:480


「なんだその数字……きずな、くらい?」


 ライムサイザーが声を震わせる。

 そして何かに気付いたのか、顔に手を当てて笑い出した。


「ああ、そうか! そういうことか!

 お前は喰らう側だったのか!

 事が思い通りに進みすぎて忘れていたが、やはりお前は関わるべきじゃなかった!

 さっきまで喚いていた馬鹿とは思えないぜ!」


 くつくつと笑いを漏らしながらこちらを見る。


「人類の皮を被った化け物め」

「……知るか」


 俺は地を蹴りドラゴンへと近づく。

 その巨大な身体を脚で蹴り飛ばすと、容易く壁へと吹き飛んでいった。

 なんだ、思ったより弱いな。


 飛んでいったドラゴンが生徒たちのいる観客席に落ちそうになる。真下にいた生徒たちが悲鳴を上げるが、すんでのところで緑色の壁が現れ生徒を守った。


「おいぼっち! お前なにしてる! 生徒を巻き込むつもりか!」


 弓聖が守護の魔法を発動したらしい。

 丁度いい。

 俺は床に転がっているオウカを持ち上げて、弓聖の方へと放り投げた。


「うわ、ばかてめえ!」


 慌てて立ち上がった弓聖がオウカをキャッチする。

 これでフィールドに障害物は無くなった。


『ん、まあ、なんだ、お前』

「いまさら名前を教えないといけないか?」


 起き上がったドラゴンがこちらを睨む。

 大きな口を開き、火炎弾を放ってきた。

 対して俺が腕を振るうと、指先から影が現れ、迫ってきた火炎弾を飲み込む。

 そして影が口のように開き、喰らったしたエネルギーを光線として発射。

 ドラゴンはすかさず反応してもう一発火炎弾を放ち相殺してきた。


『ん、まあ、下等生物が、なんだこれは』

「兄貴ぃ、大丈夫ですかあ? このままだと……死んじまいますぜ?」

『ん、まあ、その時は竜の心臓ドラゴン・ハートになるだけ、媒体なら、ここにいくらでもある』


 ドラゴンは翼を広げ風を巻き起こした。

 身体が浮き上がりそのまま空へと飛び出す。


『ん、まあ、でも、ベリルが下等生物に、殺される可能性、ない。

 だが、その調子乗った態度に、罰を与える。

 ベリルが、本気、光栄に、思え。

 そして、跪いて、死ね』


 ドラゴンが空中で静止する。

 その目の前に黒い魔法陣が浮かび上がった。


『終焉もたらす闇よ。瞳に映りし羸弱るいじゃくを、風を穢す惰弱だじゃくを、眇々びょうびょうたる全てを飲み込め。

 アビリティ――深潭クァラプァ


 ベリルの頭上に黒い球が現れる。

 大きさは先ほどの比ではない。会場を飲み込める大きさだった。


 だが、


「何勘違いしてるんだ」


 奴の傲慢な思考に口を挟む。


「お前程度が、俺に相手してもらえると思うなよ?」

『……下等生物が』


 会場に向かって深潭クァラプァが放たれた。

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