第53話 最後の選択
***
淡々と燃える炎を眺めていた。
地魔法でかまどを作り上げ、センとナナの遺体を運び込んでから火をつけた。
最後に二人を一緒にしたが、それが正解だったのかはよくわからない。
ただ、二人のキズナが永遠であるなら最後まで傍がいいだろうと、一緒に
俺の隣に座っているオウカも、たなびく煙を眺めていた。
どれくらい時間が経っただろうか。
ずっとこうしているわけにもいかない。
俺の手元にはセンとナナ、そしてネイクラさんのギルカードがある。
冒険者が死体を運ぶことは滅多にない。クエスト中であれば邪魔になるだけだし、そもそも冒険者は死ぬことを覚悟して活動している。死んだ後の身体のことは気にしていない。気にしているのはアイテムボックスから吐き出される荷物と、残された家族のことぐらいだろう。
だから、代わりにギルドカードを渡したり回収したりする。
恋人であったり、冒険者になりたての小さな子供などであれば、稀に連れて戻ってくる人もいるが……。
「ギルドに戻りますか?」
3枚のカードをじっと見ているところにオウカが尋ねてくる。
「……いや」
ゆっくりと立ち上がる。
「ダンジョンを見つけ、そして潜る」
「で、でも、ネイクラさんのギルドカードは見つけました。それを持っていけば昇格試験は終わりです。ご主人様、こんな状態で無理にダンジョンを探す必要は」
俺の宣言に、オウカは心配そうな面持ちで次々と言葉を吐き出す。
彼女は俺のことを心配してくれている。その気持ちは素直に受け入れたいところだが。
「スカルヘッドは間違いなくダンジョンから出てきたモンスターだ。あの強さは、この森では異常なものだ」
「異常、ですか」
オウカへの説明を続けながら、自分の服やアイテムボックスの中身を再確認する。
「この森は低ランク冒険者がよく利用している。だからダンジョンも早く見つかるんだ。
にも関わらず、あのスカルヘッドの登場だ。人を、それも冒険者を殺せるほどのゴブリンが育つのにどれくらいかかるか」
実際問題、モンスターでもレベル100越えなんて滅多にいない。ゴブリンでなければAランク討伐クエストになる。
「そんなモンスターが出てくるダンジョンがあり、スカルヘッド並のモンスターが多数いるなら問題だ。街にまで危険が及ぶ。だから、早めに場所を特定してギルドで探索チームを編成しなければならない」
自身の服には破れた形跡が一切なくなっていた。スカルヘッドに切り裂かれ、炎で焼かれていたはずだが、これもオウカの回復魔法のおかげだろうか。
アイテムボックスには回復薬がいくつかのみ。
危険は大きいが、行くしかあるまい。
「オウカ」
「はい」
視線を合わせないまま、問いかける。
「これが最後の選択だ。
冒険者でいるか、やめるかだ。」
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