第201話 魔力の流れ
「ん、まあ、ふざけるなよ」
攻撃を受けたベリルはなおも尾でオウカを振り払おうとする。
オウカは身体を翻して軽やかに躱してみせた。
再び二人の距離が開き、沈黙が漂う。
「――
ベリルが殺気を放つ。こちらにまでその感覚が影響し、心臓が縮こまって息苦しくなる。
「それで、止めたつもりですか?」
オウカはまたもベリルの背後をとっていた。
もうその動きは俺に見えない。
視界から二人が消える。
衝突音と、微かな空気の揺れだけが伝わってきた。
「なんで、どうして彼女は動けるんだ」
「……殺気は、あくまでスキルだから」
カイロスの疑問に答える。
「ドラゴンの殺気はスキルで齎されたもの。
その発動は必ず魔力を介する。だから思ったんだ、竜威は魔力に影響させているんじゃないかって」
「魔力に……影響?」
「人は体内よりも体外の魔力を感じやすい。そして、人体周辺の魔力は体内の魔力に合わせて流れる。
それが乱されたとき、人は違和感を覚えるんだ。
それを強く影響させて、「動いたら殺される」と思わせるのが竜威なんだ」
「つまり、魔力の流れを乱す魔法、それが殺気になっているのか」
「ああ、だから流れを自身で直すか、それを理解したうえで行動できれば、殺気を恐れる必要はない」
オウカも特訓中に気付いた。それからは行動の素早さが上がり、反撃できる余裕も生まれた。
だが、それでもドラゴンには敵わないと、だから逃げる術だと伝えたんだ。
それがどういうことだ。
目の前のオウカは俺の知る強さをはるかに上回っている。
これが、邪視なのか。
二人の姿が視界に戻ってくる。
ベリルには傷がほとんどない。
オウカは……思ったよりも負傷している
◆オウカ ♀
種族 :妖狐
ジョブ:邪視
レベル:-
HP :2490/5175
MP :4600/6050
攻撃力:5350
防御力:5175
敏捷性:5700
運命力:5035
アビリティ:邪視開眼・九尾幻界-五尾・夜目・燐火
スキル:中級回復魔法・初級土魔法
ステータスが通常のものでない。
邪視はステータスを上げる効果があるのか?
だとしても、いまのままでは到底勝ち目はない。
「もう、二つ」
オウカが呟く。
すると、オウカの尾が増える。
計、六尾。
オウカの手が僅かに震えている。
鼻から血が垂れ、青い目は充血していた。
……ちょっとまて。
もしかして、それはステータスを上げてるんじゃなくて、肉体のリミッターを外してるだけじゃないのか?
「オウカ! やめろ!」
「ウラァアア!!」
俺の声を無視して、オウカがベリルに襲い掛かる。
だが、オウカの一振り。
ベリルの身体がゆらりと揺れた。
「幻覚!?」
違う。確かにそこにいる。
揺らめいたベリルの手がオウカの腕を掴んだ。
「っ!?」
オウカが天井へ向かって放り投げられる。
見上げた時、そこにはすでにベリルが両手を重ねて構えていた。
「ん!」
「ぐっ!?」
下ろされた手がオウカの腹部に直撃。
そのまま地面に落下した。
「オウカ!」
「だい、じょうぶ、です!」
オウカはすぐに立ち上がり――
「……」
僅かに瞳を濁らせて、唇を噛む。
「ん、まあ、アビリティ――
オウカを囲う、4体のベリルがいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます