第354話 精零
何が起きている。
いや落ち着け。エレミアがやられた。同時にそれは俺のステータスが元に戻ったことも意味する。
まさかドラゴンが一瞬でやられるなんて。しかしあれは……。
レイミアも、あいつが。
「させませんっ!」
止まってしまった俺よりも先に動いたのはオウカだった。
いつの間にか尻尾の数は四つになり、魔剣を精霊に向けて振り下ろす。
「あああああ!」
気配を察していたのか、ゾ・ルーが振り返ると同時に、白騎士が現れてオウカに対抗する。
「そんなもの!」
しかしオウカの魔剣は白騎士を一刀両断。
その勢いのまま精霊の肩を抉った。
「ぐッ――ああああああぁぁあああ!!」
今度は精霊も逃げる準備をしていなかったのか、血を吹き出して喚く。
後ろの勇者候補たちが何人か倒れるが、まだ意識のあるやつらは肩で息をしながらも、苦痛の表情を和らげる。
「ああ忌々しい忌々しい忌々しい!!
妖狐族があああああ!」
精霊が魔法陣から鎖を放つが、オウカは難なく避ける。
その光景に相手は舌打ちしてまた喚く。
他の魔法を発動しているときは避けられないのか。
だからこその黒夢騎士と捉えていいだろう。
そして、
「お前、
「あぁ……?」
俺が問うと、精霊はオウカを警戒しつつ横目でこちらを見る。
そして、俺の表情からなにを感じ取ったのか、歪なほどに口角を吊り上げた。
「ああ、この街全体にかけていますよ?
忌々しき妖狐族が敵であり滅ぼすものであり、全員が屠れるように、ね」
「それで? 全体だけでなく、個別にも使ったんだろ? いま殺されたエレミアもそうだ」
「ええ、ええ、そうですとも。脳内に演奏を響かせて大きくさせ、鑑賞の作法も知らぬ低能では耐えきれません」
「そうか」
なら、ラセンも、レイミアも。
「お前が、全部やったんだな」
拳を強く握る。
「クフフ!」
精霊が嗤う。
こいつは――
その時、
「ダメですよ」
俺の肩を誰かが叩く。
振り返ると、リーが優しい表情を浮かべて俺のことを見つめていた。
再構築が、終わったのか。
「言ったではないですか。彼女たちの意志でここまできたのだと。
だから、ツムギがすべきことはそれではありません」
リーが俺の前にでて、ゾ・ルーと向かいあう。
「ツムギには、まだやることがあるでしょう。
こんな精霊は吾がなんとかしておきますので、ツムギは最後の戦いの準備でもしていてください」
「リー……」
リーがこちらを向い笑みを浮かべる。
それだけだった。
それで、彼女がどうする気なのか分かってしまった。
声に出して止めようとする前に、彼女が放つ。
「精霊魔法――
空間の揺れとともに、視界が眩い光に包まれた。
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