第4話 契約

「まずはこちらのナイフで右手の親指を少し切ってください。左手の甲を前に出し、私の言葉を復唱したら、相手の甲に血で線を引いてください」


 エル王女に言われるがまま、二人が準備を整える。


「それでは始めます。『愛と友の神ミトラスに誓い、ここに新たなる絆を欲する』」

「「愛と友の神ミトラスに誓い、ここに新たなる絆を欲する」」


 二人が互いの甲に血で線を引く。てかよく一度で言えるな。さすが成績トップ組。

 引いた血がふわりと光を帯びてそのまま消えていく。

 すると、二人の首元の模様が動き出し『01』と形を変えた。


「それでは、ステータスを確認してください」


 光本と飛野がステータスを開く。


「確かに……ステータスが上がっている」

「え、え、私のなんか倍以上になってるんだけど」


 驚く二人を見て、クラスメイトが「おお~」と驚嘆した。


「そうです。それがキズナリスト――我々人類に与えられた力なのです」

 

 フレンド機能、もといキズナリストは契約することでステータスを上昇させるみたいだ。

 ステータスを底上げし、プラス魔族を倒して経験を増やすことで強力な勇者になる……ということか。

 それなら最初のステータスが10だらけなのも致し方ないだろう。これから増やせばいいんだ。これから。


「さあ皆様も、お近くの方と契約を結んでください。契約は二人一組で行っていきます」

「えっ」


 この世界にきて初めて出た声がそれだった。

 二人一組になって……。


 このクラスは31名ですが?


***


「えーっと」

 

 男子生徒は嬉々として、女子生徒は落ち着いてきた子たちから、すでに二人一組になって契約を始めていた。

 そんな中、友達のいない俺は突っ立っているしかなかった。


 ステータスを上げる手段としてキズナリストは必須要素だろう。さらにいえば、これだけ身内がいる機会もないはずだ。ここで契約をしなければ出遅れるというか取り残されるというかぼっちだからどうしようもねえ!


「どうかされましたか?」


 耳元で声がして、驚きのまま振り向くとそこにはエル王女がいた。


「まだ契約を結んでおられてませんよね?」

「えと、クラスメイト……召喚されたのは31人でして」

「まあそれは。私の考えが及ばずに申し訳ございません」

「い、いえ、そんな」


 ペコペコと頭を下げてくるエル王女に、こちらも申し訳なくなってきて一緒に頭を下げてしまう。

 結局のところ、俺がぼっちしているのがいけないわけであって、誰かに頼んで三人組にしてもらえばよかっただけなのだ。そんなこと頼める相手がいないからぼっちなんだけどね。


 顔を上げたエル王女が自身の胸元に手を当てた。


「よろしければ、私が契約のお相手をさせていただきます」

「え」

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