第66話 報告

 起きて早速呼び出されたのが、もちろんギルドである。

 目を覚まし次第速やかに来るよう手紙が来ていた。

 あちこち筋肉痛のなのか、悲鳴を上げる身体に鞭を入れながらオウカとギルドへ訪れた。


「あ、ツムギくんだあ」


 マティヴァさんが相変わらずの口調で近寄ってくる。

 今日は受付ではなく食堂の配膳係らしい。ギルド内も業務が様々で大変そうである。


「見かけたらギルド長室まで直接案内しろって言われてたの。こっちこっち」


 マティヴァさんに手を引かれて、俺とオウカはギルド長室へと入る。


「おう、よく生きてたな」

「ええ、まあ」


 真っ赤な髪のギルマスの第一声がそれだった。


「もう、ぎぃちゃん、言い方ってものがあるでしょ」

「それはこっちの台詞だ。ギルマスと呼べ」


 柔らかいソファに座らされる。

 俺の隣にオウカ。向かい側にギルマスとマティヴァさんで四人だ。


「さて、三日前に大まかなことは、そこのお嬢さんから聞いている」


 ギルマスがチラリとオウカを見る。

 俺の言いつけを守ったのか、オウカが妖狐だとはバレていないみたいだ。いまもオウカは頭巾を被っているが特に指摘はされない。


「だが一応お前の口からも話が聞きたい。

ざっと流れを確認し合いながら進めよう」

「……わかりました」


 俺はマティヴァさんに昇格試験の説明を受けたところから報告を始めた。


 冒険者としての推測から西の森を探索したこと。

 死体を見つけるも、センとナナに奪われたこと。

 その後スカルヘッド・ゴブリンが現れて二人が殺されたこと。

 ダンジョンの危険性を重視し潜り――


「そこで魔族に遭遇しました」


 俺の言葉を紙に記録していたマティヴァさんの筆が止まる。

 ギルマスは呼吸を忘れていたかのように、一度大きく息を吸った。


「魔族……か。それは相手が言ったのか?」

「……ええ」


 正しくは異界の目で見たのだが、そのことを伝えはしない。

 異界の目は勇者候補として召喚された人間が持つ特殊なアビリティだ。安易に情報として伝えていいものではないと俺は考えている。


 思えば、なんとも濃い一日だった。

 いや、オウカと出会ってからと考えれば二日間だったか。

 アンセロは目的を持って俺にオウカを売りつけた。

 結果としてアンセロを倒すことは出来たが、様々な疑問と問題が増えている。

 特に、あの低い声の魔族。


『いつか必ず殺す』


 あいつは必ず俺のところへ来る。

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